Skip to main content
新宿・渋谷からもアクセス良好 | 心療内科・精神科および神経内科のクリニック
お問い合わせ

新型コロナウイルス流行期間の遠隔勤務

アメリカ合衆国の職域メンタルヘルスセンターの提言を翻訳したものです(原著:Working Remotely During COVID-19

あなたの心の健康と生き生きとした暮らしを守るために

新型コロナウイルス(COVID-19)の流行は、かつてなかったような新たなそして大きな挑戦が求められるものとなっています。ここでは、このウイルスをめぐる未知の領域の道案内をしながら、新たな取り組み方や協力のしかたについて新しい道筋を見出し、同時に私たちの心の健康や生き生きとした暮らしを守れるような方策についても目を向けたいと思います。

  多くの方々が、初めて、同僚や友人・家族から離れて、フルタイムでの遠隔勤務(テレワーキング)を体験しています。私たちの今まで通りの日常生活は乱されてしまい、そのために身体的・精神的・経済的な不安やストレスや緊張が高まっています。このような混乱や不確かさの結果、不安やストレスにつながっていくことは、至極当然のことです。今、かつてないほどに、私たち皆が、私たち自身の心の健康や生き生きとした暮らしを大事にしていかなければなりません。私たちが、コロナウイルスの感染から身を守ろうとする際に、人との間に距離をおく(ソーシャル・ディスタンシングsocial distancing)ことは、社会的に孤立する(ソーシャル・アイソレーションsocial isolation)ことを意味するものではないということを心に留めておく必要があります。

自分の健康や生き生きとした暮らしを、どのように維持していくか

▶ 規則的な日課を守りましょう

  必ず行うこと(ルーティンroutine)やスケジュールを作り、それを守りましょう。あなたや家族それぞれが、働いたり勉強をしたりする決められた空間を準備しましょう。あなたの予定の中に、英気を養うための定期的な休憩時間を入れることを忘れないで下さい。スケジュールは人によって違ったものになるでしょうが、ここに一例を示します。

時間活動
7:00AM起床、ストレッチ (子どもや動物の世話)
7:30AM朝食、家族の時間 (テレビやスマホなし technology free)
8:30AM-12:00PM仕事、最新情報を調べる、およそ30分ごとに小休憩
12:00PM- 1:00PM昼食休憩、新鮮な空気を吸う、ストレッチや運動
1:00PM – 5:00PM仕事、30分ごとに休憩、同僚と連絡をとる
5:00PM – 7:00PM夕食時はテレビやスマホの画面を見るのは休憩 !、友人・家族・愛する人と話す
7:00PM – 9:00PM自分自身のための時間 (セルフ・ケアの時間 self-care time)

▶ 人とつながり続けましょう

 家族、友人や支援システム(support systems)と、電子機器(facetime, skype, google hangoutその他のビデオ通話のできる手段)を使ってつながり続けましょう。あなたの恐怖や心配について、あなたが信頼する人々と話し合いましょう。あなたが信頼している人々も、あなたと同じように感じている可能性があるので、そこにつながれるチャンスがあります。

 免疫システムを強く保ちましょう

  次のような方法で、免疫を強く保つことを確実にしましょう。

  •  手を石けんを使って20秒間洗いましょう。
    (あるいは、ハッピー・バースデイを2回分歌う時間 ! )
  • 睡眠を十分にとりましょう。
  • よく食べて、水分も十分にとりましょう。
  • ビタミンをとりましょう。

 自分自身の感染予防を優先し、人との接触を減らしましょう

  これは、コロナウイルスが広がるのを防ぐ上で、必要不可欠です。なすべきことは、次のようなことです。

  • 再度繰り返しますが、手を石鹸と水で20秒間十分に洗いましょう。定期的に手指の消毒剤を使いましょう。
  • くしゃみや咳をする時は、口や鼻をティッシュ・ペーパーで覆いましょう。もしティッシュ・ペーパーがない時は、服の袖で覆いましょう。
  • 通行の多い場所や、生活や仕事の中で頻繁に触れる物は、除菌シートで拭いて消毒しましょう。
  • 体調の悪い人に接触することは避けましょう。自分の顔(目、鼻、口)に触ることを避けましょう。
  • あなた自身の体調が悪い場合は、家で過ごしましょう。

▶ 運動をして活発に過ごしましょう

 運動は、あなたの身体面の健康に良いばかりでなく、あなたの精神面の健康にも良い影響があります。定期的に、朝起きたら家の周りを回ってみましょう。歩く、ストレッチ、体幹トレーニング (プランク・トレー二ング,planks) あるいは跳躍運動 (挙手跳躍運動,jumping jacks)など運動ならどのようなものでも、あなたのストレスを減らし、脳内のエンドルフィンを増やすのに役立ちます。今の時期は、私たちが普段通っているジムやフィットネス・センターは閉鎖されているかも知れませんが、多くの施設が、自由に使える生配信やアプリを使用したトレーニング・プログラムを、会員の方向けや一般向けに提供しています。どのようなものが活用できるか、オンラインでチェックしてみましょう。

▶ 新鮮な空気を吸いましょう

もし状況が許すなら、外に出かけて速足で歩き、新鮮な空気を吸いましょう。ただし、人が密集した場所は避け、他の人との密接な接触は避けましょう。

▶ 情報を把握しておきましょう

知識は力になります。新型コロナウイルスとの闘いにおける進歩について、最新情報を得るようにしましょう。米国疾病予防管理センター(Center for Disease Control, CDC)及び世界保健機構(WHO)のような信頼できる情報源から、最新情報を得るようにしましょう。

▶ メディアの過剰な視聴は控えましょう

不安やストレス、パニックの引き金になったり高めたりするようなニュース、メディア、ソーシャル・メディアを見続けることは避けましょう。情報は得る必要がありますが、メディアの過剰な視聴は控えましょう。

▶ 仕事のスケジュールの限度を守りましょう

家を離れて仕事をする際には、無理のない妥当な労働時間になっているかどうかに注意しましょう。在宅で仕事をする際には、もっと仕事をしたいという誘惑にかられることがあるかも知れません。しかし、そうしてしまうとあなたの健康や生き生きとした暮らしに負担となってしまうので、健康的な限度のあるスケジュールを守るようにしましょう。

▶ 気晴らしと気分転換

あなたの暮らしを生き生きとさせるような活動に取り組むことは、喜びをもたらし、目の前にある難題からあなたの気分をそらしてくれます。例えば、瞑想やヨガも良い方法ですが、多くの場合オンラインで無料で提供されています。その他にも、日記をつける、読書をする、芸術にいそしむ、新しいレシピで料理を作る、呼吸のエクササイズ(breathing exercise)、気持ちが落ち着くような音楽を聞く等の方法もあります。

▶ 創造的な取り組みをしましょう

あなたにとってどのようなことが良い結果につながったかについてのヒントを、同僚や友人と分かち合い、同じようなことをするよう勧めましょう。例えば、Google hangout(ビデオ会議ツール)を使って、お互いが都合つく時間に、1分間一緒に体幹トレーニング(plank training)をする、挙手跳躍運動(jumping jacks)を10回やるというような、新しいアイデアを試してみるのもよいでしょう。内容はどのようなことでも良いのですが、単純なことの方がよいでしょう。あるいは、飼っているペットが、新しい生活習慣の中でもいかに楽しく暮らしているかについて、写真を共有するのも良いかも知れません。互いにつながり合うための創造的な方法には、限界はありません。

困難な時期に、自分の心の健康をいかにうまく管理するか

上記の情報は、あなたが精神的な不調を体験している・いないにかかわらず、誰にでもあてはまることになります。ここでは、精神的な不調があると診断されている方に対して、追加のアドバイスをお伝えします。

▶ 治療や服薬を続けましょう

  • 生活パターンの変化があったとしても、あなたの治療計画に従っていくことは非常に重要なことです。
  • もし症状が変化したり、この困難な時期の不安を取り除く必要があったりする場合には、治療を提供してくれる機関に連絡をとり、オンラインでの診療を行っているかを確認しましょう。メンタルヘルス分野でのオンライン診療は広がりつつあり、ケアにつながる重要な方法となります。
  • 最新の薬が手元にあるかを確認しましょう。もし薬が少なくなる心配があるようであれば、あなたの医療サービス提供者 (health care provider) に60日あるいは90日処方をしてもらえるよう求めましょう。
  • 風邪薬やインフルエンザの治療薬は、抗うつ薬や抗精神病薬と相互作用があることもあるので、もしあなたが市販薬を服用している場合には、あなたの医療サービス提供者 (health care provider) に相談するようにしましょう。

▶ 新型コロナウイルス(COVID-19)の症状に対応しましょう

もし新型コロナウイルスと関係した症状があるような場合には、最初にあなたのプライマリーケア提供者 (primary care provider) に連絡をとり、次のステップについて相談しましょう。このウイルスは病院の機能に負担をかけ続ける傾向があるため、病院の救急外来を受診するよりも、プライマリーケア提供者から、あなたがどうしたらよいかについての指示を受けることが一番です。

▶ 注意サインや引き金を覚えておきましょう

あなたのメンタルヘルスや健康全般や生き生きした生活に関して、新たな症状の出現や症状の悪化がないか、注意を払い続けましょう。あなたのストレス・レベルを低く保つために最善を尽くし、上に挙げたような活動に取り組みましょう。そうすることが、この混乱した時期に、あなたのストレス・レベルをコントロールしていくのに役立ちます。

▶ 支援ネットワークに参加しましょう

あなたの人生の他の大きな変化に際してと同様に、家族や信頼できる友人たちとつながり続け、この困難な時期にあなたが追加の支援を必要としているのなら、そのことを伝えましょう。具体的には、定期的な電話や連絡、あるいはそれに類した支援があげられます。
この時期にあなたが何を必要としているかについて、はっきりと伝えましょう。

管理者や人事担当者は、従業員を支援するために何ができるか

従業員に職場外で過ごすことを求める多くの組織において、従業員との定期的なコミュニケーションを奨励・促進することは、これまでにも増して重要となってきます。ここでは、管理者や人事担当者が、従業員が職場や同僚とつながり続けることを援助する際のヒントをあげてみます。

▶ 従業員に対して共感を示し、従業員に対応できる状態を保ちましょう

従業員たちは、新型コロナウイルスの現状について、圧倒されるような気持ちや不安を抱いているということを理解しましょう。あなた自身が、スタッフとその恐怖について話し合い、質問に答え、仕事やその他の起きうることについて安心できるような言葉がけをできるような状態を保ちましょう。

▶ コミュニケーション・ツールや会議ツールを使って、従業員とのつながりを保ちましょう

定期的な連絡のために、ZoomやJoin Me等のオンラインで会議ができる手段を用い、チームメンバーが互いに“面と向かって(face-to-face)”つながり合えるようにしましょう。

▶ 孤立したり孤独になったりすることの影響を認識しましょう

このような状況は、従業員がオンライン・トレーニングで自らの技術を磨く、絶好の機会となります。他のことをあれやこれやと心配し続けるのではなく、学習に集中することは、良い気分転換にもなります。オンライン・トレーニングや新しい学習の機会をつくり、従業員に勧めましょう。

[原文ではここの最後に「Employee Assistance Program(EAP)やOrganization’s health planに連絡をいれましょう」という項目がはいっていますが、制度が日本と異なるため割愛しました。日本においては、職場の健康管理部門の保健師や産業医と連携しながら対策を立て、どのようなサービスが受けられるかについての情報を従業員に伝えていくことが有用かと思われます。]

(翻訳: 中 康)