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新型コロナウイルス流行期間の遠隔勤務

アメリカ合衆国の職域メンタルヘルスセンターの提言を翻訳したものです(原著:Working Remotely During COVID-19

あなたの心の健康と生き生きとした暮らしを守るために

新型コロナウイルス(COVID-19)の流行は、かつてなかったような新たなそして大きな挑戦が求められるものとなっています。ここでは、このウイルスをめぐる未知の領域の道案内をしながら、新たな取り組み方や協力のしかたについて新しい道筋を見出し、同時に私たちの心の健康や生き生きとした暮らしを守れるような方策についても目を向けたいと思います。

  多くの方々が、初めて、同僚や友人・家族から離れて、フルタイムでの遠隔勤務(テレワーキング)を体験しています。私たちの今まで通りの日常生活は乱されてしまい、そのために身体的・精神的・経済的な不安やストレスや緊張が高まっています。このような混乱や不確かさの結果、不安やストレスにつながっていくことは、至極当然のことです。今、かつてないほどに、私たち皆が、私たち自身の心の健康や生き生きとした暮らしを大事にしていかなければなりません。私たちが、コロナウイルスの感染から身を守ろうとする際に、人との間に距離をおく(ソーシャル・ディスタンシングsocial distancing)ことは、社会的に孤立する(ソーシャル・アイソレーションsocial isolation)ことを意味するものではないということを心に留めておく必要があります。

自分の健康や生き生きとした暮らしを、どのように維持していくか

▶ 規則的な日課を守りましょう

  必ず行うこと(ルーティンroutine)やスケジュールを作り、それを守りましょう。あなたや家族それぞれが、働いたり勉強をしたりする決められた空間を準備しましょう。あなたの予定の中に、英気を養うための定期的な休憩時間を入れることを忘れないで下さい。スケジュールは人によって違ったものになるでしょうが、ここに一例を示します。

時間活動
7:00AM起床、ストレッチ (子どもや動物の世話)
7:30AM朝食、家族の時間 (テレビやスマホなし technology free)
8:30AM-12:00PM仕事、最新情報を調べる、およそ30分ごとに小休憩
12:00PM- 1:00PM昼食休憩、新鮮な空気を吸う、ストレッチや運動
1:00PM – 5:00PM仕事、30分ごとに休憩、同僚と連絡をとる
5:00PM – 7:00PM夕食時はテレビやスマホの画面を見るのは休憩 !、友人・家族・愛する人と話す
7:00PM – 9:00PM自分自身のための時間 (セルフ・ケアの時間 self-care time)

▶ 人とつながり続けましょう

 家族、友人や支援システム(support systems)と、電子機器(facetime, skype, google hangoutその他のビデオ通話のできる手段)を使ってつながり続けましょう。あなたの恐怖や心配について、あなたが信頼する人々と話し合いましょう。あなたが信頼している人々も、あなたと同じように感じている可能性があるので、そこにつながれるチャンスがあります。

 免疫システムを強く保ちましょう

  次のような方法で、免疫を強く保つことを確実にしましょう。

  •  手を石けんを使って20秒間洗いましょう。
    (あるいは、ハッピー・バースデイを2回分歌う時間 ! )
  • 睡眠を十分にとりましょう。
  • よく食べて、水分も十分にとりましょう。
  • ビタミンをとりましょう。

 自分自身の感染予防を優先し、人との接触を減らしましょう

  これは、コロナウイルスが広がるのを防ぐ上で、必要不可欠です。なすべきことは、次のようなことです。

  • 再度繰り返しますが、手を石鹸と水で20秒間十分に洗いましょう。定期的に手指の消毒剤を使いましょう。
  • くしゃみや咳をする時は、口や鼻をティッシュ・ペーパーで覆いましょう。もしティッシュ・ペーパーがない時は、服の袖で覆いましょう。
  • 通行の多い場所や、生活や仕事の中で頻繁に触れる物は、除菌シートで拭いて消毒しましょう。
  • 体調の悪い人に接触することは避けましょう。自分の顔(目、鼻、口)に触ることを避けましょう。
  • あなた自身の体調が悪い場合は、家で過ごしましょう。

▶ 運動をして活発に過ごしましょう

 運動は、あなたの身体面の健康に良いばかりでなく、あなたの精神面の健康にも良い影響があります。定期的に、朝起きたら家の周りを回ってみましょう。歩く、ストレッチ、体幹トレーニング (プランク・トレー二ング,planks) あるいは跳躍運動 (挙手跳躍運動,jumping jacks)など運動ならどのようなものでも、あなたのストレスを減らし、脳内のエンドルフィンを増やすのに役立ちます。今の時期は、私たちが普段通っているジムやフィットネス・センターは閉鎖されているかも知れませんが、多くの施設が、自由に使える生配信やアプリを使用したトレーニング・プログラムを、会員の方向けや一般向けに提供しています。どのようなものが活用できるか、オンラインでチェックしてみましょう。

▶ 新鮮な空気を吸いましょう

もし状況が許すなら、外に出かけて速足で歩き、新鮮な空気を吸いましょう。ただし、人が密集した場所は避け、他の人との密接な接触は避けましょう。

▶ 情報を把握しておきましょう

知識は力になります。新型コロナウイルスとの闘いにおける進歩について、最新情報を得るようにしましょう。米国疾病予防管理センター(Center for Disease Control, CDC)及び世界保健機構(WHO)のような信頼できる情報源から、最新情報を得るようにしましょう。

▶ メディアの過剰な視聴は控えましょう

不安やストレス、パニックの引き金になったり高めたりするようなニュース、メディア、ソーシャル・メディアを見続けることは避けましょう。情報は得る必要がありますが、メディアの過剰な視聴は控えましょう。

▶ 仕事のスケジュールの限度を守りましょう

家を離れて仕事をする際には、無理のない妥当な労働時間になっているかどうかに注意しましょう。在宅で仕事をする際には、もっと仕事をしたいという誘惑にかられることがあるかも知れません。しかし、そうしてしまうとあなたの健康や生き生きとした暮らしに負担となってしまうので、健康的な限度のあるスケジュールを守るようにしましょう。

▶ 気晴らしと気分転換

あなたの暮らしを生き生きとさせるような活動に取り組むことは、喜びをもたらし、目の前にある難題からあなたの気分をそらしてくれます。例えば、瞑想やヨガも良い方法ですが、多くの場合オンラインで無料で提供されています。その他にも、日記をつける、読書をする、芸術にいそしむ、新しいレシピで料理を作る、呼吸のエクササイズ(breathing exercise)、気持ちが落ち着くような音楽を聞く等の方法もあります。

▶ 創造的な取り組みをしましょう

あなたにとってどのようなことが良い結果につながったかについてのヒントを、同僚や友人と分かち合い、同じようなことをするよう勧めましょう。例えば、Google hangout(ビデオ会議ツール)を使って、お互いが都合つく時間に、1分間一緒に体幹トレーニング(plank training)をする、挙手跳躍運動(jumping jacks)を10回やるというような、新しいアイデアを試してみるのもよいでしょう。内容はどのようなことでも良いのですが、単純なことの方がよいでしょう。あるいは、飼っているペットが、新しい生活習慣の中でもいかに楽しく暮らしているかについて、写真を共有するのも良いかも知れません。互いにつながり合うための創造的な方法には、限界はありません。

困難な時期に、自分の心の健康をいかにうまく管理するか

上記の情報は、あなたが精神的な不調を体験している・いないにかかわらず、誰にでもあてはまることになります。ここでは、精神的な不調があると診断されている方に対して、追加のアドバイスをお伝えします。

▶ 治療や服薬を続けましょう

  • 生活パターンの変化があったとしても、あなたの治療計画に従っていくことは非常に重要なことです。
  • もし症状が変化したり、この困難な時期の不安を取り除く必要があったりする場合には、治療を提供してくれる機関に連絡をとり、オンラインでの診療を行っているかを確認しましょう。メンタルヘルス分野でのオンライン診療は広がりつつあり、ケアにつながる重要な方法となります。
  • 最新の薬が手元にあるかを確認しましょう。もし薬が少なくなる心配があるようであれば、あなたの医療サービス提供者 (health care provider) に60日あるいは90日処方をしてもらえるよう求めましょう。
  • 風邪薬やインフルエンザの治療薬は、抗うつ薬や抗精神病薬と相互作用があることもあるので、もしあなたが市販薬を服用している場合には、あなたの医療サービス提供者 (health care provider) に相談するようにしましょう。

▶ 新型コロナウイルス(COVID-19)の症状に対応しましょう

もし新型コロナウイルスと関係した症状があるような場合には、最初にあなたのプライマリーケア提供者 (primary care provider) に連絡をとり、次のステップについて相談しましょう。このウイルスは病院の機能に負担をかけ続ける傾向があるため、病院の救急外来を受診するよりも、プライマリーケア提供者から、あなたがどうしたらよいかについての指示を受けることが一番です。

▶ 注意サインや引き金を覚えておきましょう

あなたのメンタルヘルスや健康全般や生き生きした生活に関して、新たな症状の出現や症状の悪化がないか、注意を払い続けましょう。あなたのストレス・レベルを低く保つために最善を尽くし、上に挙げたような活動に取り組みましょう。そうすることが、この混乱した時期に、あなたのストレス・レベルをコントロールしていくのに役立ちます。

▶ 支援ネットワークに参加しましょう

あなたの人生の他の大きな変化に際してと同様に、家族や信頼できる友人たちとつながり続け、この困難な時期にあなたが追加の支援を必要としているのなら、そのことを伝えましょう。具体的には、定期的な電話や連絡、あるいはそれに類した支援があげられます。
この時期にあなたが何を必要としているかについて、はっきりと伝えましょう。

管理者や人事担当者は、従業員を支援するために何ができるか

従業員に職場外で過ごすことを求める多くの組織において、従業員との定期的なコミュニケーションを奨励・促進することは、これまでにも増して重要となってきます。ここでは、管理者や人事担当者が、従業員が職場や同僚とつながり続けることを援助する際のヒントをあげてみます。

▶ 従業員に対して共感を示し、従業員に対応できる状態を保ちましょう

従業員たちは、新型コロナウイルスの現状について、圧倒されるような気持ちや不安を抱いているということを理解しましょう。あなた自身が、スタッフとその恐怖について話し合い、質問に答え、仕事やその他の起きうることについて安心できるような言葉がけをできるような状態を保ちましょう。

▶ コミュニケーション・ツールや会議ツールを使って、従業員とのつながりを保ちましょう

定期的な連絡のために、ZoomやJoin Me等のオンラインで会議ができる手段を用い、チームメンバーが互いに“面と向かって(face-to-face)”つながり合えるようにしましょう。

▶ 孤立したり孤独になったりすることの影響を認識しましょう

このような状況は、従業員がオンライン・トレーニングで自らの技術を磨く、絶好の機会となります。他のことをあれやこれやと心配し続けるのではなく、学習に集中することは、良い気分転換にもなります。オンライン・トレーニングや新しい学習の機会をつくり、従業員に勧めましょう。

[原文ではここの最後に「Employee Assistance Program(EAP)やOrganization’s health planに連絡をいれましょう」という項目がはいっていますが、制度が日本と異なるため割愛しました。日本においては、職場の健康管理部門の保健師や産業医と連携しながら対策を立て、どのようなサービスが受けられるかについての情報を従業員に伝えていくことが有用かと思われます。]

(翻訳: 中 康)

不安やストレスをうまく乗り越えよう

アメリカCDCの提言を翻訳したものです(原著:Stress and Coping

ストレスへの対処方法

新型コロナウイルス感染症の集団発生(outbreak)は、私達にとってストレスとなります。病気に関する恐怖や不安は非常に強いもので、大人も子どもも強い感情を呼びさまされます。ストレスにうまく対処することによって、あなたや、あなたが世話をする人々や、あなたの地域社会を、より強くすることができます。

誰もが、ストレスに満ちた状況に対して異なった反応をします。

集団発生に対してあなたがどのように反応するかは、あなたの個人的な背景や、あなたが他の人々と違っているところ、それからあなたが住んでいる地域社会によって異なります。

危機的なストレスに対して、より強い反応をするかも知れない人は次のような人々です。

  • 新型コロナウイルスに対してリスクが高い高齢者や慢性疾患に罹患している人々
  • 子どもと10代の若者
  • 医師や、その他の保健医療従事者、最初に援助にあたる人々(first responder)のように、新型コロナウイルスに対する様々な反応(response)に対して援助にあたる人々
  • 物質使用(substance use)の問題を含む、精神保健上の不調(mental health conditions)を抱えた人々

感染症が集団発生した際のストレスには次のようなものがあげられます。

  • あなた自身の健康やあなたが愛する人々の健康に関する恐怖や心配
  • 睡眠や食事などの生活習慣の変化
  • 不眠や集中力低下
  • 慢性的な健康問題の悪化
  • アルコール、タバコ、その他の薬物使用の増加

以前から精神保健上の不調を抱えた人々は、治療を継続していくとともに、症状が新たに出現していないか、症状が悪化していないかについて注意を払う必要があります。

あなた自身のケアを行うと同時に、あなたの友人、あなたの家族のケアをすることは、あなた自身がストレスに対処していく上での助けになります。他の人が抱えているストレスに対処できるよう援助することは、あなたの地域社会を強くすることにもつながります。

自分自身をサポートするためにあなたができること

  • ソーシャルメディアを含め、ニュースを見たり読んだり聴いたりし続けることは避けましょう。大流行(pandemic)について繰り返し耳にすることは、気持ちの動揺につながる可能性があります。
  • あなた自身の体のケアをしましょう。深呼吸をしたり、ストレッチをしたり、瞑想をしたり(meditate)しましょう。健康的でバランスの良い食事をとり、定期的に運動をし、十分な睡眠をとり、アルコールや薬物の使用は避けましょう。
  • 緊張をときほぐす時間を作りましょう。あなたが楽しめることで、何か別の活動を試してみましょう。
  • 他の人と連絡をとりましょう。あなたが信頼できる人と、あなたが心配になっていることやあなたが感じていることについてやりとりをしましょう。

もしストレスが、何日も続けてあなたの日常生活の妨げになるようであれば、あなたの健康面のケアの提供者(your healthcare provider)に連絡をとりましょう。

あなた自身や他の人々のストレスを軽くしましょう。

新型コロナウイルスについての事実を共有し、あなた自身やあなたが気にかけている人々への実際の危険を理解することは、ウイルス感染の集団発生(outbreak)のストレスを軽くします。

あなたが新型コロナウイルスに関する正確な情報を人々と共有するなら、あなたは人々が感じるストレスを軽くするのを助けることができ、またあなた自身がそれらの人々とつながれるようになります。

御両親へ

子どもや十代の若者は、自分たちの周りにいる大人の様子を見て理解したものによって反応する部分があります。もし御両親やその他の養育者の方々が、新型コロナウイルスについて冷静に自信をもって対処することができるなら、それは子どもたちにとって最も良い援助となります。御両親の側でよりよい準備ができていれば、周りにいる人々、特に子ども達に対して、相手を安心させ元気づけるような対応をすることができます。

すべての子どもや十代の若者が、ストレスに対して同じように反応するわけではありません。一般的には、気をつけた方がよい変化は、次のようなものになります。

  • 幼い子どもが過度に泣く、あるいはイライラした様子を見せる。
  • 成長によってすでに見られなくなった行動に逆戻りする。(例えば、トイレの失敗、おもらし)
  • 過度の心配や悲しみ
  • 不健康な食習慣や睡眠
  • 十代の若者においては、イライラや「行動化」
  • 学業不振や欠席
  • 注意力の低下、主注力の低下
  • 以前は楽しんでいた活動を避ける
  • 原因不明の頭痛や体の痛み
  • アルコールやタバコ、薬物の使用

あなたが子どもたちを援助するためにできるたくさんのことがあります。

  • あなたの子ども(あるいは10代のティーンエージャー)と、新型コロナウイルスについて話す時間をとりましょう。あなたのお子さん(あるいは10代のティーンエージャー)が理解できるようなやり方で、新型コロナウイルスについての質問に答え、事実を共有しましょう。
  • あなたの子どもに、あなたは安全だと伝えて安心させてあげましょう。もし子どもが動揺したりしていても、それはOKなのだと伝えてあげましょう。あなた自身のストレスについてあなたがどのように対処してきたかを、子どもたちと分かち合いましょう。そのようにすれば、子どもたちは、どのように対処すれがよいかをあなたから学ぶことができます。
  • ソーシャルメディアを含め、あなたの家族が、コロナウイルスに関するニュースにさらされるのを制限しましょう。子どもたちは、聞いたことを誤解する可能性があり、彼らが理解できないことについて恐怖を覚えることがあります。
  • 決まりきった習慣(regular routines)は続けるようにしましょう。もし学校が閉鎖された場合には、勉強の時間やリラックスして楽しむ時間について予定を立てましょう。

支援に携わる方々(responder)へ

新型コロナウイルスに関する支援を行うことは、気持ちの上で負担となる可能性があります。二次的な心的外傷性ストレス(secondary traumatic stress, STS)反応を減らすために、あなたができることがあります。

  • 心的外傷となりうるできごとを体験した家族を援助する人であれば誰でもSTSに陥る可能性があることを知らせましょう。
  • 身体症状(疲労、病気)と精神症状(恐怖、ひきこもり、罪悪感)の両方について知識を得ましょう。
  • あなた自身やあなたの家族が、大流行(pandemic)への反応から立ち直るのに、時間を
  • 与えましょう。
  • あなたが楽しめるような、個人的なセルフケア活動のメニューを作りましょう。例えば、友人や家族と一緒に過ごす、運動、読書などです。
  • 新型コロナウイルスについての報道に接することに、休みを入れましょう。
  • もしあなたが、新型コロナウイルスの問題が、あなたが集団発生(outbreak)以前のように、あなたの家族や患者をケアする能力に悪影響を及ぼしているという気持ちに襲われたり心配になったりするなら、助けを求めましょう。

検疫のための隔離(quarantine)から解放された方々へ

ヘルスケア提供者があなたが新型コロナウイルスにさらされたと考えた場合、他の人々から引き離されるということは、あなたの具合が悪くないにしても、ストレスに満ちたことです。検疫のための隔離から解放された時に、一人一人が異なった感情を抱きます。

そのような感情とは、次のようなものです。

  • 検疫のための隔離から解放された安堵感を含む、入り混じった感情
  • あなた自身の健康や、あなたが愛する人々の健康についての、恐怖や心配
  • 新型コロナウイルスの症状を、あなた自身がチェックしたり、他人に監視されたりする体験からくるストレス
  • あなたが人に感染をさせるまいと固く決心していたといても、あなたの友人や愛する人々が、あなたと接触して病気をうつされてしまうという根拠のない恐怖を抱いていることへの悲しみや怒り
  • 検疫のための隔離期間中、普通に仕事をすることができなかった、あるいは親としての義務を果たすことができなかったという罪悪感
  • その他の、情緒的な変化あるいは精神面の変化

子どもたちも、子どもたち自身あるいは彼らが知っている人々が検疫のための隔離から解放された時には、気持ちが動揺したり強い感情を抱いたりすることがあります。あなたの子どもがそれに対処していくことを、あなたが手助けすることができます。

(翻訳: 中 康)

家族がうつ病にかかった時の理解と対応

調子の悪さを感じとる

  うつ状態にある時は、表情が暗く沈んだ感じになり、表情の変化も少なくなります。夜眠れなくなったり、食欲がなくなって食事量が減ったりします。悪い方向の考えばかりが浮かびやすくなるため、話も悲観的になります。動きが少なくなり何事も億劫そうに見えます。ずっと同じ姿勢を続けていたり、横になることが多くなったりしますし、特に午前中を中心に横になって過ごすことが増えます。外出が減り、仕事を休むようになったりし、それまで楽しんでいた趣味や異性にも関心を示さなくなることもしばしばみられます。以上のような症状が、特に早朝から午前にかけて強まりますが、軽症の場合には夕方から夜にかけては結構元気になることがよくあります。しかしより重い症状になると、1日横になって過ごすようになることもあります。

本人の訴えは、額面通り受け止めてよい

うつ状態にある場合、中等度の症状であれば家族が見てわかることが結構ありますが、軽症のうつ状態の場合は、周りからは症状をはっきりとはとらえにくいことがあります。一見した状態よりも、本人はもっと苦しんでいることが少なくありません。そのようなわけですので、本人の訴えは額面通り受け止めた方がよいでしょう。例えば、はた目には普通に睡眠をとっているように見えても、眠りが浅く夜中に目が醒めたりして苦しい体験をしていることは少なくないのです。また、意欲が出ない、何事もするのが億劫だ等といった症状は、表面からはなかなか見えづらい症状と言えます。

とても疲れやすいことを理解する

  不調の時期には、話したり人と会ったりすることさえ億劫になっていることが少なくありません。家族と話すのさえ億劫になります。そのような時は、長話をするのではなく、短い声がけを適度にした方が、本人に不要な負担をかけず、安心感につながります。

仕事や家事の負担を軽くする

十分な休養をとることが蓄積疲労から抜け出していく必要があります。そのために、仕事や家事等の負担を軽減する必要があります。普段本人がとっている役割を、誰かが肩代わりしてあげた方がよいでしょう。過大な期待を抱いて、本人を過度に励ましたり無理に頑張らせようとすると、うつ症状が悪化します。

薬物療法の必要性を理解する

  うつ病は、蓄積疲労がとても強くなった状態で、そこから抜け出ていくためには、単なる休養では不十分で、薬物療法の効果が大きいと言えます。主治医とよく相談して、必要な薬を服用することが回復していく上で、非常に重要です。また抗うつ薬は効果発現に2週間程度かかるため、回復には時間がかかることも頭に入れておきましょう。

周りからせかすことは避け、本人ペースでゆっくり療養

  本人のペースでゆっくりと回復していくのが一番よい回復のしかたです。家族のペースを押しつけてせかさない方が良い結果につながります。早く良く使用として本人を叱咤激励するようなことは禁物です。

出かけるかどうかは本人の意思を尊重する

  本人の回復のために良かれと思って、周りから外出・外食・旅行などを勧めたくなることが多いようです。しこし本人が自宅にこもりがちな時期は、まだエネルギーの充電が十分ではないのです。抗うつ薬が効果を表し、うつ症状が改善してくると、自分から自然に動けるようになってきます。本人が外出等をしぶる場合は、周りから無理に勧めるのではなく、本人の意向を尊重する必要があります。無理に外出等をさせようとすると、その時は無理をすれば動けるかも知れませんが、うつ症状が悪化します。

復職は普通に生活が送れるようになってからがよい

  仕事を休んでいる場合は、復職を急がせない。焦った復職は、再発の危険が高くなってしまうからです。十分に調子を回復し、元通りに生活が送れるようになってから、復職を考えるのがよいと言えます。復職に際しては、ストレスが本人の限界を越えないよう注意や工夫をしながら、長く働き続けることを目指していくのが最もよいやり方です。

良くなってからも再発予防が大事に

  うつ病から回復した後も、うつ病の再発に注意をしていく必要があります。そのためには、仕事や生活で降りかかるストレスが本人の限界を越えないようにするため、日頃の生活の中で疲れや不調をよくとらえながら、セルフ・コントロールの工夫をしていく必要があります。うまくセルフ・コントロールをすることができるようになっていけば、再発に早期に気づいたり、再発を未然に予防したりすることが可能となっていきます。

 (中    康)

新型コロナウィルス(2019-nCoV)の流行に際しての、子どもたちへの心理的援助

WHOの提言を翻訳したものです(原著:Helping children cope with stress during the 2019-nCoV outbreak

子どもは、ストレスに対して、例えば依存的になる、不安になる、ひきこもる、怒りっぽくなる、あるいは動揺する、おもらしをする等、様々な方法で反応します。

お子さんの反応に対して、子どもの支えになるようなやり方で対応しましょう。

子どもは、困難な時期には、大人の愛情や関心を必要とします。子どもに、ゆったりできる時間を確保し、十分な思いやりを示しましょう。

子どもの話をよく聴くことを忘れないようにします。優しい言葉がけをし、安心させてあげましょう。

もし可能であれば、子どもが遊んだりリラックスしたりできるような機会を作りましょう。

可能な限り、親や家族が子どもと近い距離を保つようにし、子どもと親や養育者を分離することは避けましょう。もし分離が避けがたい場合(例えば、入院)、定期的な接触をするようにして(例えば、電話で)、安心させてあげましょう。

可能な限り、普段どおりの日課やスケジュールを守るようにしましょう。一方、新しい環境においては、新しい日課やスケジュールを作りましょう。その中には、学校に行くことや勉強すること、安全に遊んだりリラックスしたりすることを含みます。

子どもに対して、今何が起きているかについての事実を伝えましょう。何が起きていて、病気にかかってしまう危険を減らすためにどのようにしたらよいかについて、わかりやすい情報を提供しましょう。子どもの年齢に応じて、わかりやすい言葉で伝えていく必要があります。

それには、どのようなことが起きうるかについて、安心できる形で情報を提供することも含まれます。具体的には、家族の誰かや子ども自身の具合が悪くなるかも知れないこと、そのような場合にはしばらくの間病院に行かないといけないかも知れないこと、医師が具合を良くしてくれること等です。

(翻訳: 中 康)

関連: 新型コロナ流行に際してのストレスへの対処(WHO提言)

新型コロナウィルス(2019-nCoV)の流行に際してのストレスへの対処

WHOの提言を翻訳したものです(原著:Coping with stress during the 2019-nCoV outbreak

危機的な状況の時に、悲しくなる、ストレスを感じる、混乱する、恐怖を感じる、あるいは怒りを感じる等はごく普通の反応です。

信頼している人と話すことは、あなたの助けになります。友人や家族に連絡をとりましょう。

もし自宅に留まらざるを得なくなった場合には、健康的な生活の仕方を維持しましょう。

具体的には、適切な食事をとる、睡眠をとる、運動する、そして愛する家族とやりとりをする、他の親族や友人とメールや電話で連絡をとる等です。

あなたの気持ちの動揺に対処する方法として、タバコ、アルコール、薬物等は避けましょう。

もし打ちのめされたような気分にとらわれてしまう場合には、医療保健従事者やカウンセラーと話しましょう。もし必要なら、身体的・精神的な健康に関する援助を得るため、どこに行きどのようにすればよいか、計画を立てましょう。

事実を確認しましょう。あなたが、自分にふりかかる危険を正確に判断し、合理的な予防措置を講じることができるようになる助けになるような情報を集めましょう。世界保健機構(WHO)、国、地方自治体のウェブサイトなど、あなたが信頼できる情報源を見つけましょう。

あなたが不安になると感じるような報道を、あなたやあなたの家族が見たり聞いたりする時間を減らすことによって、心配や気持ちの動揺を抑えましょう。

過去にあった困難な状況に対処する際に、あなたの助けとなったような方法を活用しましょう。今回の流行に際して、あなたが、自分の感情の揺れ動きに対処するために、そのような方法を活用しましょう。

(翻訳: 中 康)

関連: 子どもたちへの心理的援助(WHO提言)

うつ病で療養をする際の工夫

 (うつ病の治療の基本については、別コラム「うつ病・うつ状態からの回復」をご参照ください。)

うつ病の療養で何を目指すか

  うつ病で療養をする際に、どのような状態になれば回復なのか、どのような状態になれば仕事に復帰しても大丈夫なのか、迷うことが少なからずあるように思います。

  うつ病の療養の基本は、まずは普通の生活が送れる位に症状が回復することです。うつ病の症状がいろいろ残っている状態で、時期尚早な無理な復職をしようとすると、短時間でうつ病が再燃してしまう危険が高まるため、注意が必要です。

  その際に、よく議論になるのは、治療開始前よりある程度よくなったからよしとするか、自分のベストの状態までよくしていくかですが、考え方としてはなるべく自分のベストの状態に回復するようにした方がよいでしょう。自然回復をゆっくり待つというよりは、薬物療法の力で、あるいは生活の仕方を工夫することによって、よりよい状態にもっていくことが必要です。

疲労が蓄積しないようセルフ・コントロールが必要

  回復期には、自分の中に疲労が蓄積していかないようにセルフ・コントロールが必要になってきます。焦るあまり、無理なスケジュールを自分に課したり、あたかも体のトレーニングをするような厳しい計画を立てたりすることは禁物です。無理をし過ぎると、蓄積疲労が増大してしまい、うつ病からの回復にとってマイナスになってしまいます。

自分の気持ちを大切にする

  セルフ・コントロールをうまく行っていくためには、自分の正直な気持ちを大事にする必要があります。つまり、生活の中で何をやっても構わないのですが、自分がやりたくない・億劫だ・辛い・疲れる等と感じることは避けた方が賢明です。具合の悪い時期には、ごろごろして過ごす、だらだらと過ごす形でも、それが休養につながるので構わないわけです。回復期には、どの程度仕事や家事や身の回りのことを行うのがよいかを、自分で判断していくことが必要になります。例えば、家族や親しい友人が、心配して外出や外食に誘ってくることはしばしば経験しますが、そのような誘いに無理に合わせるのではなく、億劫であれば、断るか先延ばしにした方がよいでしょう。また気分転換に旅行を計画する方もいますが、あまりにも状態が悪い時期は控えた方がよいですし、回復期にはいっても、頭で考えたよりも疲れやすいことが多いため、旅行などは慎重に考えた方がよいかも知れません。もし旅行に行く場合には、予定にゆとりをもち、ハードに動き回る日程は避け、調子が悪ければ、予定を変更して宿泊先でゆっくり過ごしたりできるような計画がよいように思います。

家族に理解してもらう

  回復期には、家族に自分の状態や、何ができて何ができないか等について理解してもらい、うまく回復していけるように協力してもらう必要があります。回復のめざし方について家族と考えが一致しない場合には、主治医の診察に家族にも同行してもらい一緒に対応策を考えるのもよい方法だろうと考えます。また家族関係がストレスになっている場合には、それをどのように軽減していくかも、大事な相談事項になるでしょう。

一人でできるリハビリテーション

  症状がかなり回復してきたら、仕事を休んでいる場合は、復職のために、リハビリテーション的な計画を主治医と相談しながら立てて、「一人リハビリ」をする選択肢もあります。具体的には、自宅から、例えば図書館のようなところに出かけて、午前中数時間、読書や仕事に関係する情報収集などをして過ごして帰って来る。次の段階では、昼食を外で済ませ、午後図書館で一仕事してから帰って来る。午後を、例えばジムや水泳に行くとか散歩に行くとかでも構いません。体を動かすと、復帰に向けての体力もつきますし、気分もすっきりするので、悪くない選択と考えます。

復職のためのリワーク・プログラム

  長い期間仕事を休んでいるような場合には、リワーク・プログラムを活用する選択肢もあります。これは、週に何日か通って復職のための準備練習を集団で行うもので、医療機関、障碍者職業センターなどで実施しています。但し、短期間の休職の場合には、リワーク・プログラムのようなものを利用せずに、復職できることが多いように思います。

産業医との相談

  また復職に際しては、職場の産業医の面談が組み込まれていることもあります。そのような場合には、主治医の診察とは別に、産業医と相談しながら職場復帰を進めていくことになります。

  以上のように、うつ病の療養のしかたには、うつ病の程度によって様々な工夫や方法があります。主治医と十分に相談しながら、ご自分にあった療養方法をみつけていけるとよいと考えます。

(中    康)

大人の発達障害

発達障害とは?

  大人になってから、それまでは何とかやってきて問題が表面化しなかったが、例えば仕事をする上で困難がある、人間関係がうまくいかない等が大変になってきて、職場不適応などから受診につながることがあります。そのような場合に、診察の中で細かく問診を行い、心理テストも行って調べることで、発達障害の傾向がみつかることがあります。

得意・不得意のばらつきが大きい状態

  個人の中で様々な能力の間に得意・不得意のばらつきがある程度以上に大きいために、勉強や生活や仕事等がかなりしづらい状態になっていることがあります。人によって何が不得意かは違いますが、苦手な領域があると、たとえそれが正常範囲のことであっても、本人にとってはうまくやっていくことがかなり困難になることがあります。そのような状態を、自閉症スペクトラム障害(広汎性発達障害、アスペルガー症候群)の傾向として理解することができます。

苦手な領域の具体例

  苦手な領域の具体例をあげると、例えば、耳から聞いての聴覚的な情報把握が苦手な方は、人の長い話を頭に入れるのが苦手だったり、電話が苦手だったり、集団での話し合いの流れについていくのが困難だったりすることがあります。そのような場合には、こまめにメモをとって情報を視覚的に頭に入れたり、耳で聞くよりも目で文章をみて情報を頭に入れるような工夫をすると、効果があることがあります。

また、目からはいる視覚的な情報処理が苦手な方は、目で見て判断するのが苦手なため漢字が苦手だったり、図示されたものや地図、路線図を活用するのが苦手だったりすることがあります。そのような場合には、言葉による説明がついていた方が頭に入りやすくなります。

さらに、長い文を理解するのが苦手で、何を書いているのかが頭に入りにくいという困難を抱えた方や、文章を書くのが苦手な方もいます。

一方、目や手を使っての作業的なことが苦手な方もいらっしゃいます。具体的に言うと、目で見たものをノートに取ったり、課題をこなしていったりする上で、やりにくさが生じてきます。

人によっては、作業手順の順番を頭の中でイメージして段取りを組んだり、スケジュールを立てて取り組んだり、複数の仕事をこなしたり(マルチタスク)、優先順位の判断をすることが苦手な方もいます。そのような場合には、やらなければいけないことをリストアップし、取り組む順番や優先順位を決めたりすることが助けになります。

上記のようなことを背景に、周囲の人とのコミュニケーションがうまくいかなくなったりずれたりするようなことも起きてきます。中には、人の気持を汲んで理解するのが苦手なため、やりとりがうまくいかなくなってしまう方もいらっしゃいます。

以前から続いている悩み

  多くの方のお話を聞いていると、学生時代から、さらにはもっと以前の子ども時代から何らかの不自由を感じてきていた方が殆どです。これまでは、何とか工夫をしながら頑張ってこなしてきたり、あるいは問題があっても周囲の友人がそれを理解し受け止めてくれ問題が表面化せずにきたりした等、様々な経緯があります。

注意力低下を伴うことも

  これまで述べてきたような発達障害傾向に加えて、少なからぬ頻度で、忘れ物が多い、大事な物をなくす、集中力が持続せず切れやすいなど、注意力・集中力低下のサインが合併していることが見られます。人によっては、非常に頻回に忘れ物をしたり、何かに集中しようとしても15-20分位しか集中力がもたなかったり、他のことに気が散りやすかったり、人から聞いたことを忘れやすかったりします。片づけや整理整頓が苦手ということも、よくみられます。忘れないようメモをとっても、メモがどこにいったかわからなくなるというような場合もあります。人間関係面では、どんどん好きな話ばかりしてしまって周囲から浮いてしまうというようなこともあります。以上のような状態を、注意欠陥多動性障害(ADHD)の傾向として理解することができます。

苦手領域や注意力低下への対応

  発達障害の傾向は、その人がもっている特性のようなものですから、治してそういう傾向をなくすということが難しいことになります。そのために、相談を重ねながらその人の得意な領域を活かしながら、苦手な領域があまり出過ぎないようにする工夫を考えて、生活の中で試していくようにします。一方、注意力低下については、集中力をあげるような薬物療法が可能です。以上のようなことを組み合わせて行うことによって、それまでは困難だったことも、よりやすい形にもっていくことができます。

  気になるところがある方は、クリニックを受診してご相談下さい。

(中    康)

薬を増やすべき時・減らすべき時

薬をどの程度服用するか

 心療内科や精神科にかかって治療を受ける時に、悩み事の相談と並行して薬物療法を必要とすることも少なくありません。その際に、どのような薬をどの程度服用するかが重要なことになってきます。

薬を増やすべき時

 一言でいうと、精神症状がかなり多くみられ、そのことが御本人の苦痛につながっていたり、日常生活を送ることが困難になったりしている場合には、薬は積極的に増やすべきでしょう。

  例えばうつ病の場合、抗うつ薬をどの程度増量するかがしばしば議論の種になります。受診する前よりも大分よくなったからこれで良いという方は少なくないのですが、元々の元気な自分の状態と比較するとまだまだ調子が悪いということが多く見られます。そのような場合には、抗うつ薬を増量してなるべく普通に生活できる状態に薬で改善させる必要があります。その上で、ストレスの元となった問題にどう対処するか、自分の限界を越えずにやっていくためにはどのようにセルフ・コントロールをしながら工夫したらよいかの相談をしていった方が、回復にかかる時間も短くなります。

  但し、御本人の心の中の悩みが大きく、そのことが継続的にうまくいかない状況を生み出しており、そのことから二次的にうつ的な症状が出ている場合には、あえて抗うつ薬を使わずに心の中の悩み事や葛藤を解決することで、うつ的な症状の改善をはかる場合もあります。

  またどのような診断であっても、睡眠が十分にとれずに辛い場合には、まず十分な睡眠をとることが精神症状の回復にとっても大きなこととなります。不眠が続いている場合は、なかなか気分の落ち込み等も改善しづらいものです。

  さらに双極性障害で躁鬱の波がみられる場合、統合失調症で幻覚・妄想・被害的不安が強い場合にも、積極的に薬を使って精神症状を落ち着ける必要があります。

薬を減らすべき時

 一方、精神症状が落ち着いた状態が続いている時は、減薬について検討する必要が出てきます。

  不眠や不安などの症状が落ち着いてきた場合には、睡眠導入剤や抗不安薬を少しずつ減量していくのが望ましいと言えます。その時に、あまり急いで無理な減らし方をすると、不眠や不安が悪化してしまったり、減薬することへの心配がつのってしまったりして、良い影響を及ぼしません。そのため、主治医と相談しながら、細かいステップを作って、徐々に段階的に減らしていくのがコツになります。

  うつ病の場合には、うつ症状が落ち着いてからもしばらくの間は、再発予防のために抗うつ薬の内服を継続した方がよいでしょう。しかし経過をみる中で、生活が安定しており、以前のようなストレスが軽減する、あるいはストレスに対する対処方法がよりよくてきるようになれば、抗うつ薬を減薬する時期と言えるでしょう。抗うつ薬を減量する時も段階的に減らしていき、急激に減らすとかえって焦燥感(イライラ)等が悪化することもあるので、主治医と相談しながら注意して減らしていくことが必要です。

再発予防のために薬を続けた方がよい場合

  但し、薬をやめてしまわずに、しばらく長期間継続した方がよい場合もあります。うつ症状が長引いている場合、双極性障害の場合、統合失調症の場合などは、なるべく減薬をはかりながら、再発予防のために必要な薬は継続していく必要があります。

薬を減らしたい時は是非相談を

  また、減薬したいという希望をお持ちの場合には、自己判断で中断するのではなく、主治医とよく相談することをお勧めします。主治医からみると、続けることが重要で簡単には減らさない方がよい薬と、症状がおさまれば減らしてもよい薬とがあるからです。処方内容を決めるにあたっては、薬を内服したあとの症状の変化や副作用の有無などを主治医に充分に伝えていくことが大事になります。その上で、主治医と相談を重ね、よりよい処方を工夫していくことをお勧めします。

(中    康)

パニック障害からの回復

 パニック障害とは?

 パニック障害とはパニック発作を主な症状とするもので、突然に、強い不安、動悸、胸痛、呼吸困難、ふるえ、発汗、めまい等に襲われるもので、時には自分がどうかなってしまうのではないか、死んでしまうのではないかという強烈な不安を伴うことがあります。

  パニック発作は、電車・バス・飛行機の中など閉鎖された空間の中で起きることも多く、パニック発作が起きる不安から、交通機関の利用が困難になることも多くなります。比較的症状が軽い場合は、交通機関が利用できない不便はあるものの、その他は普通に社会生活が送れることも少なくありません。一方、症状が強い場合には、パニック発作が起きやすい場面を避けようとするために、家から出るのか困難となりひきこもり状態に至ることもあります。

  また、パニック発作が起きる前には、ストレスや過労などの負荷がかかっていることが多くみられます。

本体は強い不安

  パニック発作は様々な身体症状を伴うため、救急外来を受診することも多くみられますが、身体疾患ではないため、身体面の診察や諸検査では異常が認められません。パニック発作の本体は、強い不安によるものなので、実際には生命に危険が起きるということはありません。またパニック障害に伴う不安の中身は、『もしパニック発作がまた起きてしまったらどうしよう?』という予期不安が大きいことが特徴です。つまり、客観的にありうる以上に、御本人の中では思い込み的な不安が高まってしまっているということになります。

  また、一人だと症状が強く出る場合でも、誰か頼れる人が同伴しているとパニック発作が殆ど起きないようなこともみられることがあります。

  パニック障害の治療

パニック障害の治療は、大きく分けて薬物療法と精神療法とがあります。

  薬物療法としては、抗うつ薬や抗不安薬を内服することで、パニック発作の症状を和らげることができます。抗うつ薬は内服する場合には毎日続けて服用しますが、抗不安薬は、毎日内服する場合と頓服で内服する場合があります。いずれにせよ、薬は長期間内服を継続するというよりは、症状の激しい時期を過ぎ症状が安定してきたなら、減薬について検討していくのがよいでしょう。

  精神療法としては、まずは上記のようにパニック障害に伴う不安は予期不安であることが多く、実際にはそれほど頻度が高い訳ではないことを確認し合う必要があります。思い込み的な不安が強くなってしまっていることになりますので、自分で自分の不安をコントロールすることが可能になるわけです。また薬物療法より症状が安定してきたら、パニック発作を起こしやすい、自分が苦手とする場面や場所(例えば電車に乗る)にあえて出向き、少しずつ慣れるように練習をしていく方法もあります。その際に注意すべきことは、あまり無理をすると不安がひどく高まってしまって逆効果になるため、不安があまり高まり過ぎないようにスモール・ステップで少しずつ慣らしていくのがよいやり方と言えるでしょう。

  上記のような方法を組み合わせることによって、パニック障害の症状を改善していくことができます。御自分の状況に合った解決方法を相談していくために、クリニックの受診をお勧めします。

(中    康)

仕事の休み方・職場復帰のしかた

仕事を休まざるをえない時

  心身の調子が悪い時に、仕事を継続しながら相談や治療を進めることもありますが、時には仕事をしばらく休まなければいけいけないような事態になることもあります。

  例えばうつ病・うつ状態の場合には、抗うつ薬の効果が表れてくるまでに2週間ほどの時間がかかるため、症状が軽減して普通の生活に戻れるまでしばらく時間がかかります。さらに、症状が軽快した後で、職場復帰訓練として徐々に仕事に慣れるよう練習していくことも有効な選択肢になります。

 また適応障害の場合には、仕事を休むと比較的急速に症状が回復していくことが多くみられます。そのため、仕事を休んでいる間に必要なことは、症状を軽くしたり仕事に慣れたりするというよりは、どのようにしたら降りかかってくるストレスに対応できるかについての相談が中心となります。

 復職についての考え方

 いずれにせよ、初めの段階よりも状態が少し良くなったからということではなく、自分の最善の調子を取り戻して復職をすると考えていくのが良いと言えます。このような場合に焦って復職をすると、それによって精神症状が再燃することも多く、二度目の自宅療法を余儀なくされることも、少なくないからです。個人にとっても職場にとっても、最善の調子を取り戻して仕事に復帰をしていくことが一番良いと言えるでしょう。

  まずはいかに最善の調子を取り戻していくかについて、主治医と十分相談をし、治療や職場復帰についての道筋について計画を作る必要があります。この時に、職場や上司の意向をまず優先するのではなく、治療や職場復帰について、医学的にみても妥当な見通しを主治医と十分に話し合うところから始めていく必要があります。

復職に向けての療養のしかた

  職場復帰を順調に行っていくためには、まず普段の生活が普通に戻っていなければいけません。朝起きられない、日中疲れやすく横にならないといられない、昼寝をしないと疲れを回復できない、外出するとすぐに疲れてしまう等の症状がまだ残っている場合には、職場復帰は時期尚早です。また自分の気力や体力が、ベストの自分の調子の7-8割程度まで回復すると、職場復帰に手が届くようになる時期と言えるかも知れません。

職場への復帰のしかた

  職場復帰のしかたは、自宅療養で休んでいた期間が比較的短い場合には、いきなりフルタイムの仕事に復帰することも可能な場合もあります。しかし数か月以上休んでいた場合には、正式に職場復帰をする前に、休みを利用して職場復帰訓練を行うことが多くなります。つまり、勤務上は休み(病気休暇あるいは休職等)の状態になりますが、職場に挨拶に行く、職場に通う練習をする、職場に短時間いる訓練をする、職場にいる時間を徐々に延ばす等の練習を、職場側と相談しながら行っていきます。

 職場復帰訓練の考え方

 どのような職場復帰訓練が適しているかは、その人によって違ってきます。したがって、自分自身に合っていると感じられる復帰計画を作っていくのがよいでしょう。職場復帰訓練の計画ですが、職場側で段階的(週単位等)に職場にいる時間や仕事量を増やしていくような計画を作成する場合もありますが、特に計画が提示されない場合もあります。後者の場合には、主治医と相談しながら自分なりに復帰計画を作ってみて職場側に示しながら訓練を進めるのも一つの方法と言えます。いずれにせよ、自分がこうしたいという希望や意向を職場側に率直に伝えていく必要があります。自分の希望や意向をきちんと表現せず、納得できない気持ちを抱えたまま職場の意向に無理に合わせるような職場復帰訓練では、訓練段階からストレスが不必要にかかってしまうことになります。

  職場復帰訓練を実際に行っていく際には、やってみて予想外に負担がかかり無理だと感じた場合、反対にやってみたら予想外に調子よくこなせて物足りない場合など、訓練の途中で柔軟に予定を変更していくのがよいと考えます。なぜなら、復帰訓練をちゃんとこなすことが目的ではなく、復帰訓練はあくまでも職場復帰のための手段だからです。復帰訓練で疲れたら休んでも構いません。復帰訓練のスピードをゆっくりにしたり早めたり微調整をしながら、復帰訓練をうまく使っていくことができるとよいように思います。そのあたりのセルフ・コントロールの練習は、実際に職場復帰をした後も役に立ちます。

 産業医との相談

 また職場に産業医がいる場合には、主治医とは少し違った判断がなされることもあります。その場合も主治医と産業医の両方とよく相談を重ねながら、復帰訓練を進めていくのがよいでしょう。

一人リハビリの工夫

  また正式な復帰訓練とは異なりますが、自分一人で、職場に通勤する練習をする、半日図書館等に行って何かを読んだり作業をしたり練習をする、それができたら午前・午後とどこかに通う練習をする(図書館・運動ができる施設など)等も、有効な方法のひとつです。職場に慣れる練習にはならないものの、自分なりにどこまでできるか調子を確認したり、日々練習することが心身両面のリズム作りをしたりする上で、効果があります。  職場復帰には様々な道筋があり得ますが、主治医とよく相談しながら自分に一番合った方法を選んでいけると良いと考えます。

(中 康)

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診療時間

時間
9:30〜12:30 - ◯※ - -
13:30〜18:30 -
◯※
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◯心療内科・精神科 ※心理テストを実施
★神経内科(15:00~18:30) 
☆漢方カウンセリング(15:00~18:30)

2019年4月1日から、毎週水曜が休診日となりました。

ご予約

・初台クリニックの診察は保険診療です。
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