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大人のADHD

生きづらさの背景にある集中力低下

  これまで何とかやってきたが、どうもいろいろなことをしづらい、物事に集中できない、気が散りやすい、学校や職場でもうまくいかない等、生きづらさに気づくことがあります。

  そのような中でも、うまくいかない背景として、注意力や集中力の低下が中心的な問題になっている場合があります。

忘れ物や物忘れ

  例えば、以前から忘れ物が多い、大事な物をなくすことが多い、人から言われたことを忘れてしまう等で悩んでいる場合があると思います。そのような場合に、何とかしようとして、人から言われたことをメモしないと忘れてしまうようなことがあります。また、忘れないようメモをとってもメモがどこにあるかわからなくなるとか、メモをなくしてしまう等の悩みを抱えている方もいます。そして、例えば学校で配布されたプリントがどこにあるかわからなくなる、片づけや整理整頓が苦手、部屋や鞄の中はいつもごちゃごちゃした状態にあることも少なくありません。

気が散って集中できない、なかなかやる気が起きない

10台の方ですと、学校や家での勉強について、集中力が持続しない、なかなか宿題をやるスイッチがはいらない等があります。授業中、短時間で気が散りやすく、集中できず、授業の中身が頭にはいってこないということが起きてきますが、そのような傾向は、あまり関心の持てない科目の場合に顕著になります。一方、生活場面では、周りの刺激で気が散ってしまいやすく、テレビの音や音楽など周りの刺激が多い環境だと、それが気になってしまい、目の前のことに集中できないようなことも起きてきます。仕事や家事の場面では、次々と目に入る様々なことが気になってしまい、あちこちに手を出すのだが、目の前の仕事が片付かないということも起きがちです。

  そのような集中力の低下があると、勉強でも仕事でも、不注意によるミス (うつかりミス) が多くなります。また、好きなことには長く集中できるが、嫌いなこと・興味のないことだと、やる気が起きないということがよくみられます。

遅刻、時間を守れない

外出等の予定があっても、目の前のしたいことに気がいってしまい、短時間何かをするつもりが長時間はまってしまい、予定していた時間に外出できなくなり、遅刻したり待ち合わせの時間を守れなかったりすることも起きることがあります。

心の中に浮かんだことを抑えられなくなりやすい

人間関係では、自分の話したいことがあると、どんどん好きな話ばかりをしてしまい、周囲から浮いてしまうこともあります。そのような中で、思っていることをつい言い過ぎてしまい、人間関係にひびがはいることも起きてきます。あるいは、言いたいことが頭に浮かぶと、ズバッと率直に言い過ぎてしまい、周りが引いてしまうようなことを言ってしまうこともあります。

そのように自分の気持ちや考えが優先になってくるため、順番待ちをすることが苦手という方も少なくありません。

学校よりも仕事場面で表面化しやすい

以上のような傾向が強いと、学校時代はまだ何とかやり過ごすことができても、仕事をするようになると、仕事がうまくいかない・長続きしないということも起きやすくなってきます。そのような状態になると、自分に自身失ってしまったり、自尊心が低下したりというとも起きてきます。

以上のような問題について、自分で気がつくこともあるでしょうが、親しい友人や異性の交際相手から指摘されて気づくことも少なくないように思います。

注意力・集中力低下に気づいた場合には

  これまでに述べてきたような特徴は、診断としては注意欠如多動症(ADHD)に該当するものです。初台クリニックに受診する思春期から成人期にかけての方の場合には、多動傾向はそれほど多い訳ではなく、多動がみられず不注意が優勢な注意欠如症の形をとることがよくみられます。また、少なからぬ割合の方が、得意・不得意のばらつきが大きいという傾向も併せ持っています(自閉症スペクトラム障害ASDあるいはアスペルガー症候群等の傾向)。さらに、注意力・集中力の低下に端を発して、いろいろなことがうまくいいかないために、うつ状態に陥って受診される方も珍しくありません。

いずれにせよ、自分一人で考えたり悩んだりしているだけでは、解決することが難しい問題と言えるでしょう。困っていることについて、医療機関を受診して相談する必要があります。受診した際には、面接を通して細かく困っていることをお聞きし、必要に応じて心理テストを併用し、生きづらさ・やりづらさの背景にある問題を見極めていきます。

注意力・集中力低下に対してできる工夫

生活の中でできる工夫としては、忘れ物をしないよう、大事なものは決まった場所にしまう等のルールを決めることは意味があります。具体的には、下記のような工夫ができるでしょう。

・鞄の中に貴重品を入れておく透明なポーチを活用する。

・貴重品はカバンに紐でつなげておく。

・財布に大きな金額を入れず小銭入れとキャッシュレスにする。

・重要な書類をもらったら入れる決まったファイルを作る。

・メモを保管する場所を決めておく。

・よく目につく所にメモを貼っておく。

・何かに取り組む時は、必要なものだけがあり余計な刺激がない環境を整える。

・何時に次の行動に移るか、時間をあらかじめ決めておく。

・10分~15分程度の短い時間に区切って課題に取り組む。

  また、自分の進路や仕事は、自分に合ったものを選ぶ必要があります。もし、現在取り組んでいることが自分に向かない場合には、より合ったものに取り組めるよう変えられないか、検討する必要があるでしょう。

集中力を上げる薬を活用する

さらに、集中力を改善できる薬を内服するという選択肢もあります。薬がうまく効くと、注意力・集中力が改善し、落ち着いてものごとに取り組むことができるようになります。

注意力・集中力低下で困っている場合はクリニックに相談を

  注意力・集中力については、簡単に人に相談できることでもなく、一人で悩みを抱えていることも少なくないと思います。そのような悩みについて、率直に話し、対応方法についてやりとりすることは、これまでの生活を良い方法に変えていくことにつながります。もし注意力・集中力で悩んでいる方がいらっしゃいましたら、是非クリニックを受診して相談をすることをお勧めします。

(中    康)

人の目を気にし過ぎず、本音を大事にしながら生きる工夫

人の目を気にすることの良し悪し

  人からどう見られるかを気にする心理は誰にでもあります。ほどよく気にするのであれば、それは自分をよりよりものに作り変えていく上で役に立つかも知れません。しかし、人の目を過剰に気にしてしまうと、自分の気持ちや考えという物差しよりも、人の気持ちや考えという物差しが優先されるようになり、自分の本当の気持や考えは心の中で押し殺されてしまう(抑圧)ようになり、心が余計なエネルギーを使うことになり、とても苦しい状態になります。

気にし過ぎが過剰になると

  人からどう思われるかというようなことばかり、しょっちゅう考えていると、考えがことごとく自分を責める悲観的な方向に傾くことが多くなり、否定的な考えの悪循環に陥っていることが少なくありません。

  また、周りにいるすべての人から良く思われたいと願う方もいます。願いとしてはわからなくはないのですが、私たちの実際の人間関係をみてみると、本当に気の合う人は比較的少数で、どうにも気の合わない人や考え方の違う人がいることは、否定しようもありません。

  あるいは、人より常に上にいたいと願う方もいます。自分が本当にやりたいことがあって、その世界で人よりも優れていたいと頑張るのであれば、それは充実した人生になることでしょう。しかし、自分の本当にやりたいことがはっきりしない、あるいは全く見いだせないまま、人より上にいたいという点だけを願うならば、それはとても苦しい生き方をすることになります。

背景にある、同性との間の競争心や不安

  そのような悩みの背景には、男性も女性も、同性同士の関係の中で、自分の方がより優れていたいと願ったり、同性からどのような評価や対応を受けるか心配したりする心理が隠れていることが少なくありません。そのような同性に対する葛藤や不安は、私たち人間が生きていく上で、大きなテーマのようなものです。自分の考えや行動の仕方、生き方等を肯定的にとらえることができ、他の同性からの脅威に不安を感じることが少なくなれば、落ち着いた気持ちで日々の生活や人生を送ることができるようになります。

本音を大事にしながら生きるためには、どうしたらよいか

  それでは具体的にはどのようにしたら、気にし過ぎるところを減らすことができ、神経質な心配から開放されることができるのでしょうか。

  一つは、悲観的な見方にはまっていることに気づいたら、肯定的な考えに切り替えるのもよいかも知れません。『うまくいく可能性もあるんじゃないか』『ずっと続くわけじゃない』『必ず出口は来るさ』と考える訳です。

  二つ目としては、人に悩みを聞いてもらったり愚痴を言ったりするのも、悪くないかも知れません。人に話を聞いてもらうだけでも気持ちは随分楽になり、悩みが整理されることがあります。あるいは自分の悩んでいることについて、人に聞いてもらって意見を聞いてみると、自分では考えもしなかったような意外なとらえ方・考え方を発見することは結構よく起きるものです。

三つ目としては、何か人と気になるやりとりがあったとするなら、その当事者である相手に、どう思ったか確認してみるのも、一つの方法です。

四つ目としては、いい加減な言葉を使って、少しいい加減に生きていきましょう。『何とかなるさ』『まあ、いっか』『明日は明日の風が吹く』といった言葉を思い浮かべることも一つの方法です。

五つ目としては、気分転換は悪くない方法です。大変なこと、辛いこと、傷ついたこと、そういうことをしばし忘れる、何かに打ち込んで楽しむ、それを通して喜びを味わうということができたなら、自分の本当の心を取り戻し、周りの意向を気にし過ぎることなくマイペースで生きていく上で、プラスに作用するように思います。

最後に六つ目として、しかし一番重要なことは、自分の本当の気持ち考えを大事にする、自分の心をもう一度取り戻すということでしょう。自分の気持ちや考えという、自分なりの物差しを第一にして、表現したり主張したりするようにしていきます。人にどう思われるかよりも、自分が今日できることをやる、納得できる1日を送るようにしていきます。

もしうまく整理がつかない悩みがあるようでしたら、初台クリニックで御相談下さい。

(中 康)

うつのつらい時期をやり過ごす工夫

うつ病初期の症状が強くつらい時期

 うつ病は、何らかのストレスや疲労が蓄積して、自力では回復しにくい慢性疲労状態に陥ったことを意味します。睡眠導入剤や抗不安薬 (いわゆる安定剤) は即効性があります。しかし、気分の落ち込み・やる気がでない・起きて動くことが大変・考えがまとまらない等のうつ症状を改善する抗うつ薬が効果を発揮するまでは、概ね2週間程度かかります。

 具合が悪くつらいのに、良くなる見通しがはっきりしない、良くなっているとあまり感じられない、そして頭の中は悲観的な考えが駆け巡りやすいような、不安になりやすい時期です。

まだ抗うつ薬があまり効かない時期の工夫

  具合が悪い時は、無理をせずに休む、手を抜く、人に任せる等の対応をするのがよいでしょう。横になって休んでいたり、ごろごろ・だらだらしていたり、寝たり起きたりの生活をしたりしていて構いません。このような時に無理をして動こうとすると、蓄積疲労がさらに積み増しになり、状態がさらに悪化することもあります。うつ症状が回復してくれば、自然と動けることが増える段階がいずれやってきます。そのためにも、通院や服薬は中断せずに継続する必要があります。

  周りからどう思われているか、周りに迷惑をかけているのではないか、また元気な自分を取り戻すことができるのだろうか等、不安や悲観的な考えが湧きやすい時期ですが、まずは御自分の心身の休養が第一です。

 そのような時に覚えておいてよいことの一つは、うつ病の場合、早朝から午前にかけてが最も調子が悪い時間帯だということです。早朝に目が醒めてしまう、目は覚めるがなかなか床から出られない、起床直後の気分がひどく落ち込んで辛い等の状態になるのですが、それはうつ病の症状のサイクルなので、病状が悪くなってしまった訳ではありません。

このような時期には、家事や外出など、何かする時は午後の後半や夕方からにした方が、動きやすいかも知れません。

 しかしうつ病は、症状が良くなる時期がいずれやってきます。苦しい状態がずっと続くのではなく、出口は必ずやってきます。いずれ回復することを信じ、回復を待つ必要があります。とはいえ、不安に思ったことは主治医に相談し、不安を解消していきましょう。

 うつ症状があるため、考えが悲観的になってしまうことがよくありますが、それは自分の本心とは異なります。そのため、大事な決めごと(仕事のこと、生活面のこと)は、元気になるまで棚上げにすることが賢明です。

薬が少し効いてきた時期の工夫

 薬が効いて症状が徐々に改善するようになります。そうなってくると、段々良くなっていく実感が持てるようになり、そのうち良くなるだろうというイメージを持ちやすくなり、希望が見えやすくなります。

 しかしとても疲れやすく、頭で考えたようには動けないことが少なくありません。頭では動けると思っていても、自分では十分意識していないが、とても疲れ切った自分の一部が水面下に隠れているのです。

 このような時期に、今日は調子がいいと思って頑張って外出したり家事をしたりするなど、これまでなかったような行動をとると、後から疲れがどっと出ることがあります。当日の夕方から夜に動けなくなったり、翌日寝込んで動けなくなったりすることが、しばしば起きます。このような調子のアップダウンを繰り返すジェットコースター状態が、とてもよくみられますが、疲れて動けないのは無理に動いた疲れに対する一時的な反応なので、病状そのものが本格的に悪化したわけではありません。調子が良くても、動く時間や仕事量を少し減らすと、後からの疲れや伸びて動けない程度がましになります。

要は、疲れ切っている自分の心身の声を聞く必要があるわけです。焦って無理して動こうとしないことが大切です。

 この時期には、遠慮せずに、家族に援助を頼み、家事等はしばらくの間は肩代わりしてもらうのが良いでしょう。また家族や知人がよかれと思って、外食や外出、旅行などの提案をすることがとてもよくみられます。しかし、本人にとっては過大な負担となってしまうことが、少なくありません。何か提案を受けても、自分の気がのらない場合は、周囲に合わせて無理をして動くのではなく、断ってゆっくり過ごした方が、回復にはよいといえます。

 ここで必要なことは、自分が今できることの限界を越えないよう、上手にセルフ・コントロールをしていくことです。それができるようになると、回復した後で、うつ病の再発予防にそのまま生かすことができます。

どこまで回復することをめざすか

 うつ病は、少し良くなればよいのではなく、一番元気だった自分を取り戻していくのが治療の目標にするのが良いでしょう。少し良くなったからといって、焦って何かに取り組むと、うつ症状が悪化する危険か高くなります。そのため、まずは普通に元気な生活ができるよう、もともとの自分の調子を取り戻していくことが必要です。そのような回復の道筋について主治医とよく相談しながら、御自分のセルフ・コントロール力を増していけるよう工夫をしていきましょう。

 (中    康)

新型コロナウイルス(COVID-19)流行期に生きるストレス

  新型コロナウイルスの流行が報告されてから10か月がたちますが、いまだに収束の兆しは見えません。国や自治体が感染対策を強化すると感染は一時的に減りますが、感染対策を緩めるとすぐに感染が増加し、社会全体が新型コロナウイルスへの対応のしかたを手探りで見出そうとしているように思われます。

在宅勤務のメリット、ディメリット

  仕事の面では、感染予防のために在宅勤務(リモート・ワーク)が増えてきていますが、在宅勤務にもメリットとディメリットがあります。通勤しなくてよいことは楽になる要素もありますが、その一方で、気分転換がしにくい、つい長時間働く結果になってしまう、同僚や上司とのコミュニケーションが減ってしまう、それによる孤立感・不安・もやもやした気分が蓄積していく等、様々なディメリットもあります。

在宅勤務のストレス

  また、在宅勤務と外出する機会の減少とが合わさって、家族同士が一緒に過ごす時間が増えることでのストレスもあります。ほどよく心の距離をとることで何とかバランスをとっていたものが、夫婦や親子の対人距離が縮まることによって、元々あった葛藤が強まり、ストレスが増し、限界を越えそうになることもあるかと思います。

  そして、高齢者や小さい子どものいる家庭では、感染の危険について特に大きな心配があるでしょう。

  さらに、子どもの学校が休みになったり、幼稚園や保育園で預かってもらったり、自分や配偶者が在宅勤務になったりすることが重なり、女性に様々なストレスが蓄積しやすい傾向があるようにも思われます。

出社勤務のストレス

  その一方で、在宅勤務から出社勤務に変わることでも、ストレスがあります。新型コロナウイルス感染の不安はもとより、新型コロナウイルス流行のために、出張が制限される、オンラインでの業務が増える等は、普通にみられる変化でしょう。新型コロナウイルス流行によって仕事が減ることも多くみられます。そのような新型コロナウイルスに関係したストレスに加えて、職場の異動や上司の交代などが重なった場合、複数のストレスが重なって、さらに強いストレスとなって私たちの心に降りかかってきます。

休職や失職の不安

  仕事の種類によっては、対人接触が濃厚な職種の場合には、休業や時間短縮を余儀なくされ、収入の減少が避けられなくなります。また非常勤の勤務継続を打ち切られたり、失職したりする方もどんどん増えつつあります。

  そしてさらに、新型コロナウイルス流行が、この先いつまで続くのか、どのような経過をたどっていくのか、自分の生活がどうなっていくのかが、不透明で見通すことができないことも不安をかきたてます。また社会の中で、新型コロナウイルスへの対応をめぐって、感染対策に重点をおく考えと経済対策に重点をおく考えが、全世界的に対立関係にあり、不安につながります。

見通しのもてないストレス

  しばらく前から、自殺する方のニュースも度々報じられますが、そのことも暗い気持ちに拍車をかけます。さらに、新型コロナウイルス流行の影響は、今後、経済的な面でも生活面でも心理的な面でも、さらに大きな問題となって、私たちの上にのしかかってくるように思われます。そして新型コロナウイルス流行の影響によって、私たちの社会や職場や家庭が既に抱えていた問題があぶりだされ、その問題が表面化していくところがあるように思われます。

ストレス症状とそれへの対応

  これまで述べてきたようなストレスから、不眠、不安、食欲低下、気分の落ち込み、悲観的になる、朝起きるのが困難になる、仕事に行く気が起きなくなる、様々な体の不調などが生じてくることがあります。

  対策としては、自分の限界を越えるようなやり方を避け、必要な人間関係を回復し、過剰な人間関係があればほどよい関係に戻し、ストレスがある中でも自分らしい生活のしかたをもう一度取り戻していくことが必要ではないでしょうか。(具体的な対策については、別コラム「新型コロナウイルス流行期間の温覚勤務」もご参照ください。)

  初台クリニックでは、新型コロナウイルスに関係して様々なストレスの相談にも応じております。病気の状態とまではいかなくても、小さな悩みでも構いませんので、是非お気軽にご活用ください。 

 (中    康)

新型コロナウイルス流行期間の遠隔勤務

アメリカ合衆国の職域メンタルヘルスセンターの提言を翻訳したものです(原著:Working Remotely During COVID-19

あなたの心の健康と生き生きとした暮らしを守るために

新型コロナウイルス(COVID-19)の流行は、かつてなかったような新たなそして大きな挑戦が求められるものとなっています。ここでは、このウイルスをめぐる未知の領域の道案内をしながら、新たな取り組み方や協力のしかたについて新しい道筋を見出し、同時に私たちの心の健康や生き生きとした暮らしを守れるような方策についても目を向けたいと思います。

  多くの方々が、初めて、同僚や友人・家族から離れて、フルタイムでの遠隔勤務(テレワーキング)を体験しています。私たちの今まで通りの日常生活は乱されてしまい、そのために身体的・精神的・経済的な不安やストレスや緊張が高まっています。このような混乱や不確かさの結果、不安やストレスにつながっていくことは、至極当然のことです。今、かつてないほどに、私たち皆が、私たち自身の心の健康や生き生きとした暮らしを大事にしていかなければなりません。私たちが、コロナウイルスの感染から身を守ろうとする際に、人との間に距離をおく(ソーシャル・ディスタンシングsocial distancing)ことは、社会的に孤立する(ソーシャル・アイソレーションsocial isolation)ことを意味するものではないということを心に留めておく必要があります。

自分の健康や生き生きとした暮らしを、どのように維持していくか

▶ 規則的な日課を守りましょう

  必ず行うこと(ルーティンroutine)やスケジュールを作り、それを守りましょう。あなたや家族それぞれが、働いたり勉強をしたりする決められた空間を準備しましょう。あなたの予定の中に、英気を養うための定期的な休憩時間を入れることを忘れないで下さい。スケジュールは人によって違ったものになるでしょうが、ここに一例を示します。

時間活動
7:00AM起床、ストレッチ (子どもや動物の世話)
7:30AM朝食、家族の時間 (テレビやスマホなし technology free)
8:30AM-12:00PM仕事、最新情報を調べる、およそ30分ごとに小休憩
12:00PM- 1:00PM昼食休憩、新鮮な空気を吸う、ストレッチや運動
1:00PM – 5:00PM仕事、30分ごとに休憩、同僚と連絡をとる
5:00PM – 7:00PM夕食時はテレビやスマホの画面を見るのは休憩 !、友人・家族・愛する人と話す
7:00PM – 9:00PM自分自身のための時間 (セルフ・ケアの時間 self-care time)

▶ 人とつながり続けましょう

 家族、友人や支援システム(support systems)と、電子機器(facetime, skype, google hangoutその他のビデオ通話のできる手段)を使ってつながり続けましょう。あなたの恐怖や心配について、あなたが信頼する人々と話し合いましょう。あなたが信頼している人々も、あなたと同じように感じている可能性があるので、そこにつながれるチャンスがあります。

 免疫システムを強く保ちましょう

  次のような方法で、免疫を強く保つことを確実にしましょう。

  •  手を石けんを使って20秒間洗いましょう。
    (あるいは、ハッピー・バースデイを2回分歌う時間 ! )
  • 睡眠を十分にとりましょう。
  • よく食べて、水分も十分にとりましょう。
  • ビタミンをとりましょう。

 自分自身の感染予防を優先し、人との接触を減らしましょう

  これは、コロナウイルスが広がるのを防ぐ上で、必要不可欠です。なすべきことは、次のようなことです。

  • 再度繰り返しますが、手を石鹸と水で20秒間十分に洗いましょう。定期的に手指の消毒剤を使いましょう。
  • くしゃみや咳をする時は、口や鼻をティッシュ・ペーパーで覆いましょう。もしティッシュ・ペーパーがない時は、服の袖で覆いましょう。
  • 通行の多い場所や、生活や仕事の中で頻繁に触れる物は、除菌シートで拭いて消毒しましょう。
  • 体調の悪い人に接触することは避けましょう。自分の顔(目、鼻、口)に触ることを避けましょう。
  • あなた自身の体調が悪い場合は、家で過ごしましょう。

▶ 運動をして活発に過ごしましょう

 運動は、あなたの身体面の健康に良いばかりでなく、あなたの精神面の健康にも良い影響があります。定期的に、朝起きたら家の周りを回ってみましょう。歩く、ストレッチ、体幹トレーニング (プランク・トレー二ング,planks) あるいは跳躍運動 (挙手跳躍運動,jumping jacks)など運動ならどのようなものでも、あなたのストレスを減らし、脳内のエンドルフィンを増やすのに役立ちます。今の時期は、私たちが普段通っているジムやフィットネス・センターは閉鎖されているかも知れませんが、多くの施設が、自由に使える生配信やアプリを使用したトレーニング・プログラムを、会員の方向けや一般向けに提供しています。どのようなものが活用できるか、オンラインでチェックしてみましょう。

▶ 新鮮な空気を吸いましょう

もし状況が許すなら、外に出かけて速足で歩き、新鮮な空気を吸いましょう。ただし、人が密集した場所は避け、他の人との密接な接触は避けましょう。

▶ 情報を把握しておきましょう

知識は力になります。新型コロナウイルスとの闘いにおける進歩について、最新情報を得るようにしましょう。米国疾病予防管理センター(Center for Disease Control, CDC)及び世界保健機構(WHO)のような信頼できる情報源から、最新情報を得るようにしましょう。

▶ メディアの過剰な視聴は控えましょう

不安やストレス、パニックの引き金になったり高めたりするようなニュース、メディア、ソーシャル・メディアを見続けることは避けましょう。情報は得る必要がありますが、メディアの過剰な視聴は控えましょう。

▶ 仕事のスケジュールの限度を守りましょう

家を離れて仕事をする際には、無理のない妥当な労働時間になっているかどうかに注意しましょう。在宅で仕事をする際には、もっと仕事をしたいという誘惑にかられることがあるかも知れません。しかし、そうしてしまうとあなたの健康や生き生きとした暮らしに負担となってしまうので、健康的な限度のあるスケジュールを守るようにしましょう。

▶ 気晴らしと気分転換

あなたの暮らしを生き生きとさせるような活動に取り組むことは、喜びをもたらし、目の前にある難題からあなたの気分をそらしてくれます。例えば、瞑想やヨガも良い方法ですが、多くの場合オンラインで無料で提供されています。その他にも、日記をつける、読書をする、芸術にいそしむ、新しいレシピで料理を作る、呼吸のエクササイズ(breathing exercise)、気持ちが落ち着くような音楽を聞く等の方法もあります。

▶ 創造的な取り組みをしましょう

あなたにとってどのようなことが良い結果につながったかについてのヒントを、同僚や友人と分かち合い、同じようなことをするよう勧めましょう。例えば、Google hangout(ビデオ会議ツール)を使って、お互いが都合つく時間に、1分間一緒に体幹トレーニング(plank training)をする、挙手跳躍運動(jumping jacks)を10回やるというような、新しいアイデアを試してみるのもよいでしょう。内容はどのようなことでも良いのですが、単純なことの方がよいでしょう。あるいは、飼っているペットが、新しい生活習慣の中でもいかに楽しく暮らしているかについて、写真を共有するのも良いかも知れません。互いにつながり合うための創造的な方法には、限界はありません。

困難な時期に、自分の心の健康をいかにうまく管理するか

上記の情報は、あなたが精神的な不調を体験している・いないにかかわらず、誰にでもあてはまることになります。ここでは、精神的な不調があると診断されている方に対して、追加のアドバイスをお伝えします。

▶ 治療や服薬を続けましょう

  • 生活パターンの変化があったとしても、あなたの治療計画に従っていくことは非常に重要なことです。
  • もし症状が変化したり、この困難な時期の不安を取り除く必要があったりする場合には、治療を提供してくれる機関に連絡をとり、オンラインでの診療を行っているかを確認しましょう。メンタルヘルス分野でのオンライン診療は広がりつつあり、ケアにつながる重要な方法となります。
  • 最新の薬が手元にあるかを確認しましょう。もし薬が少なくなる心配があるようであれば、あなたの医療サービス提供者 (health care provider) に60日あるいは90日処方をしてもらえるよう求めましょう。
  • 風邪薬やインフルエンザの治療薬は、抗うつ薬や抗精神病薬と相互作用があることもあるので、もしあなたが市販薬を服用している場合には、あなたの医療サービス提供者 (health care provider) に相談するようにしましょう。

▶ 新型コロナウイルス(COVID-19)の症状に対応しましょう

もし新型コロナウイルスと関係した症状があるような場合には、最初にあなたのプライマリーケア提供者 (primary care provider) に連絡をとり、次のステップについて相談しましょう。このウイルスは病院の機能に負担をかけ続ける傾向があるため、病院の救急外来を受診するよりも、プライマリーケア提供者から、あなたがどうしたらよいかについての指示を受けることが一番です。

▶ 注意サインや引き金を覚えておきましょう

あなたのメンタルヘルスや健康全般や生き生きした生活に関して、新たな症状の出現や症状の悪化がないか、注意を払い続けましょう。あなたのストレス・レベルを低く保つために最善を尽くし、上に挙げたような活動に取り組みましょう。そうすることが、この混乱した時期に、あなたのストレス・レベルをコントロールしていくのに役立ちます。

▶ 支援ネットワークに参加しましょう

あなたの人生の他の大きな変化に際してと同様に、家族や信頼できる友人たちとつながり続け、この困難な時期にあなたが追加の支援を必要としているのなら、そのことを伝えましょう。具体的には、定期的な電話や連絡、あるいはそれに類した支援があげられます。
この時期にあなたが何を必要としているかについて、はっきりと伝えましょう。

管理者や人事担当者は、従業員を支援するために何ができるか

従業員に職場外で過ごすことを求める多くの組織において、従業員との定期的なコミュニケーションを奨励・促進することは、これまでにも増して重要となってきます。ここでは、管理者や人事担当者が、従業員が職場や同僚とつながり続けることを援助する際のヒントをあげてみます。

▶ 従業員に対して共感を示し、従業員に対応できる状態を保ちましょう

従業員たちは、新型コロナウイルスの現状について、圧倒されるような気持ちや不安を抱いているということを理解しましょう。あなた自身が、スタッフとその恐怖について話し合い、質問に答え、仕事やその他の起きうることについて安心できるような言葉がけをできるような状態を保ちましょう。

▶ コミュニケーション・ツールや会議ツールを使って、従業員とのつながりを保ちましょう

定期的な連絡のために、ZoomやJoin Me等のオンラインで会議ができる手段を用い、チームメンバーが互いに“面と向かって(face-to-face)”つながり合えるようにしましょう。

▶ 孤立したり孤独になったりすることの影響を認識しましょう

このような状況は、従業員がオンライン・トレーニングで自らの技術を磨く、絶好の機会となります。他のことをあれやこれやと心配し続けるのではなく、学習に集中することは、良い気分転換にもなります。オンライン・トレーニングや新しい学習の機会をつくり、従業員に勧めましょう。

[原文ではここの最後に「Employee Assistance Program(EAP)やOrganization’s health planに連絡をいれましょう」という項目がはいっていますが、制度が日本と異なるため割愛しました。日本においては、職場の健康管理部門の保健師や産業医と連携しながら対策を立て、どのようなサービスが受けられるかについての情報を従業員に伝えていくことが有用かと思われます。]

(翻訳: 中 康)

不安やストレスをうまく乗り越えよう

アメリカCDCの提言を翻訳したものです(原著:Stress and Coping

ストレスへの対処方法

新型コロナウイルス感染症の集団発生(outbreak)は、私達にとってストレスとなります。病気に関する恐怖や不安は非常に強いもので、大人も子どもも強い感情を呼びさまされます。ストレスにうまく対処することによって、あなたや、あなたが世話をする人々や、あなたの地域社会を、より強くすることができます。

誰もが、ストレスに満ちた状況に対して異なった反応をします。

集団発生に対してあなたがどのように反応するかは、あなたの個人的な背景や、あなたが他の人々と違っているところ、それからあなたが住んでいる地域社会によって異なります。

危機的なストレスに対して、より強い反応をするかも知れない人は次のような人々です。

  • 新型コロナウイルスに対してリスクが高い高齢者や慢性疾患に罹患している人々
  • 子どもと10代の若者
  • 医師や、その他の保健医療従事者、最初に援助にあたる人々(first responder)のように、新型コロナウイルスに対する様々な反応(response)に対して援助にあたる人々
  • 物質使用(substance use)の問題を含む、精神保健上の不調(mental health conditions)を抱えた人々

感染症が集団発生した際のストレスには次のようなものがあげられます。

  • あなた自身の健康やあなたが愛する人々の健康に関する恐怖や心配
  • 睡眠や食事などの生活習慣の変化
  • 不眠や集中力低下
  • 慢性的な健康問題の悪化
  • アルコール、タバコ、その他の薬物使用の増加

以前から精神保健上の不調を抱えた人々は、治療を継続していくとともに、症状が新たに出現していないか、症状が悪化していないかについて注意を払う必要があります。

あなた自身のケアを行うと同時に、あなたの友人、あなたの家族のケアをすることは、あなた自身がストレスに対処していく上での助けになります。他の人が抱えているストレスに対処できるよう援助することは、あなたの地域社会を強くすることにもつながります。

自分自身をサポートするためにあなたができること

  • ソーシャルメディアを含め、ニュースを見たり読んだり聴いたりし続けることは避けましょう。大流行(pandemic)について繰り返し耳にすることは、気持ちの動揺につながる可能性があります。
  • あなた自身の体のケアをしましょう。深呼吸をしたり、ストレッチをしたり、瞑想をしたり(meditate)しましょう。健康的でバランスの良い食事をとり、定期的に運動をし、十分な睡眠をとり、アルコールや薬物の使用は避けましょう。
  • 緊張をときほぐす時間を作りましょう。あなたが楽しめることで、何か別の活動を試してみましょう。
  • 他の人と連絡をとりましょう。あなたが信頼できる人と、あなたが心配になっていることやあなたが感じていることについてやりとりをしましょう。

もしストレスが、何日も続けてあなたの日常生活の妨げになるようであれば、あなたの健康面のケアの提供者(your healthcare provider)に連絡をとりましょう。

あなた自身や他の人々のストレスを軽くしましょう。

新型コロナウイルスについての事実を共有し、あなた自身やあなたが気にかけている人々への実際の危険を理解することは、ウイルス感染の集団発生(outbreak)のストレスを軽くします。

あなたが新型コロナウイルスに関する正確な情報を人々と共有するなら、あなたは人々が感じるストレスを軽くするのを助けることができ、またあなた自身がそれらの人々とつながれるようになります。

御両親へ

子どもや十代の若者は、自分たちの周りにいる大人の様子を見て理解したものによって反応する部分があります。もし御両親やその他の養育者の方々が、新型コロナウイルスについて冷静に自信をもって対処することができるなら、それは子どもたちにとって最も良い援助となります。御両親の側でよりよい準備ができていれば、周りにいる人々、特に子ども達に対して、相手を安心させ元気づけるような対応をすることができます。

すべての子どもや十代の若者が、ストレスに対して同じように反応するわけではありません。一般的には、気をつけた方がよい変化は、次のようなものになります。

  • 幼い子どもが過度に泣く、あるいはイライラした様子を見せる。
  • 成長によってすでに見られなくなった行動に逆戻りする。(例えば、トイレの失敗、おもらし)
  • 過度の心配や悲しみ
  • 不健康な食習慣や睡眠
  • 十代の若者においては、イライラや「行動化」
  • 学業不振や欠席
  • 注意力の低下、主注力の低下
  • 以前は楽しんでいた活動を避ける
  • 原因不明の頭痛や体の痛み
  • アルコールやタバコ、薬物の使用

あなたが子どもたちを援助するためにできるたくさんのことがあります。

  • あなたの子ども(あるいは10代のティーンエージャー)と、新型コロナウイルスについて話す時間をとりましょう。あなたのお子さん(あるいは10代のティーンエージャー)が理解できるようなやり方で、新型コロナウイルスについての質問に答え、事実を共有しましょう。
  • あなたの子どもに、あなたは安全だと伝えて安心させてあげましょう。もし子どもが動揺したりしていても、それはOKなのだと伝えてあげましょう。あなた自身のストレスについてあなたがどのように対処してきたかを、子どもたちと分かち合いましょう。そのようにすれば、子どもたちは、どのように対処すれがよいかをあなたから学ぶことができます。
  • ソーシャルメディアを含め、あなたの家族が、コロナウイルスに関するニュースにさらされるのを制限しましょう。子どもたちは、聞いたことを誤解する可能性があり、彼らが理解できないことについて恐怖を覚えることがあります。
  • 決まりきった習慣(regular routines)は続けるようにしましょう。もし学校が閉鎖された場合には、勉強の時間やリラックスして楽しむ時間について予定を立てましょう。

支援に携わる方々(responder)へ

新型コロナウイルスに関する支援を行うことは、気持ちの上で負担となる可能性があります。二次的な心的外傷性ストレス(secondary traumatic stress, STS)反応を減らすために、あなたができることがあります。

  • 心的外傷となりうるできごとを体験した家族を援助する人であれば誰でもSTSに陥る可能性があることを知らせましょう。
  • 身体症状(疲労、病気)と精神症状(恐怖、ひきこもり、罪悪感)の両方について知識を得ましょう。
  • あなた自身やあなたの家族が、大流行(pandemic)への反応から立ち直るのに、時間を
  • 与えましょう。
  • あなたが楽しめるような、個人的なセルフケア活動のメニューを作りましょう。例えば、友人や家族と一緒に過ごす、運動、読書などです。
  • 新型コロナウイルスについての報道に接することに、休みを入れましょう。
  • もしあなたが、新型コロナウイルスの問題が、あなたが集団発生(outbreak)以前のように、あなたの家族や患者をケアする能力に悪影響を及ぼしているという気持ちに襲われたり心配になったりするなら、助けを求めましょう。

検疫のための隔離(quarantine)から解放された方々へ

ヘルスケア提供者があなたが新型コロナウイルスにさらされたと考えた場合、他の人々から引き離されるということは、あなたの具合が悪くないにしても、ストレスに満ちたことです。検疫のための隔離から解放された時に、一人一人が異なった感情を抱きます。

そのような感情とは、次のようなものです。

  • 検疫のための隔離から解放された安堵感を含む、入り混じった感情
  • あなた自身の健康や、あなたが愛する人々の健康についての、恐怖や心配
  • 新型コロナウイルスの症状を、あなた自身がチェックしたり、他人に監視されたりする体験からくるストレス
  • あなたが人に感染をさせるまいと固く決心していたといても、あなたの友人や愛する人々が、あなたと接触して病気をうつされてしまうという根拠のない恐怖を抱いていることへの悲しみや怒り
  • 検疫のための隔離期間中、普通に仕事をすることができなかった、あるいは親としての義務を果たすことができなかったという罪悪感
  • その他の、情緒的な変化あるいは精神面の変化

子どもたちも、子どもたち自身あるいは彼らが知っている人々が検疫のための隔離から解放された時には、気持ちが動揺したり強い感情を抱いたりすることがあります。あなたの子どもがそれに対処していくことを、あなたが手助けすることができます。

(翻訳: 中 康)

家族がうつ病にかかった時の理解と対応

調子の悪さを感じとる

  うつ状態にある時は、表情が暗く沈んだ感じになり、表情の変化も少なくなります。夜眠れなくなったり、食欲がなくなって食事量が減ったりします。悪い方向の考えばかりが浮かびやすくなるため、話も悲観的になります。動きが少なくなり何事も億劫そうに見えます。ずっと同じ姿勢を続けていたり、横になることが多くなったりしますし、特に午前中を中心に横になって過ごすことが増えます。外出が減り、仕事を休むようになったりし、それまで楽しんでいた趣味や異性にも関心を示さなくなることもしばしばみられます。以上のような症状が、特に早朝から午前にかけて強まりますが、軽症の場合には夕方から夜にかけては結構元気になることがよくあります。しかしより重い症状になると、1日横になって過ごすようになることもあります。

本人の訴えは、額面通り受け止めてよい

うつ状態にある場合、中等度の症状であれば家族が見てわかることが結構ありますが、軽症のうつ状態の場合は、周りからは症状をはっきりとはとらえにくいことがあります。一見した状態よりも、本人はもっと苦しんでいることが少なくありません。そのようなわけですので、本人の訴えは額面通り受け止めた方がよいでしょう。例えば、はた目には普通に睡眠をとっているように見えても、眠りが浅く夜中に目が醒めたりして苦しい体験をしていることは少なくないのです。また、意欲が出ない、何事もするのが億劫だ等といった症状は、表面からはなかなか見えづらい症状と言えます。

とても疲れやすいことを理解する

  不調の時期には、話したり人と会ったりすることさえ億劫になっていることが少なくありません。家族と話すのさえ億劫になります。そのような時は、長話をするのではなく、短い声がけを適度にした方が、本人に不要な負担をかけず、安心感につながります。

仕事や家事の負担を軽くする

十分な休養をとることが蓄積疲労から抜け出していく必要があります。そのために、仕事や家事等の負担を軽減する必要があります。普段本人がとっている役割を、誰かが肩代わりしてあげた方がよいでしょう。過大な期待を抱いて、本人を過度に励ましたり無理に頑張らせようとすると、うつ症状が悪化します。

薬物療法の必要性を理解する

  うつ病は、蓄積疲労がとても強くなった状態で、そこから抜け出ていくためには、単なる休養では不十分で、薬物療法の効果が大きいと言えます。主治医とよく相談して、必要な薬を服用することが回復していく上で、非常に重要です。また抗うつ薬は効果発現に2週間程度かかるため、回復には時間がかかることも頭に入れておきましょう。

周りからせかすことは避け、本人ペースでゆっくり療養

  本人のペースでゆっくりと回復していくのが一番よい回復のしかたです。家族のペースを押しつけてせかさない方が良い結果につながります。早く良く使用として本人を叱咤激励するようなことは禁物です。

出かけるかどうかは本人の意思を尊重する

  本人の回復のために良かれと思って、周りから外出・外食・旅行などを勧めたくなることが多いようです。しこし本人が自宅にこもりがちな時期は、まだエネルギーの充電が十分ではないのです。抗うつ薬が効果を表し、うつ症状が改善してくると、自分から自然に動けるようになってきます。本人が外出等をしぶる場合は、周りから無理に勧めるのではなく、本人の意向を尊重する必要があります。無理に外出等をさせようとすると、その時は無理をすれば動けるかも知れませんが、うつ症状が悪化します。

復職は普通に生活が送れるようになってからがよい

  仕事を休んでいる場合は、復職を急がせない。焦った復職は、再発の危険が高くなってしまうからです。十分に調子を回復し、元通りに生活が送れるようになってから、復職を考えるのがよいと言えます。復職に際しては、ストレスが本人の限界を越えないよう注意や工夫をしながら、長く働き続けることを目指していくのが最もよいやり方です。

良くなってからも再発予防が大事に

  うつ病から回復した後も、うつ病の再発に注意をしていく必要があります。そのためには、仕事や生活で降りかかるストレスが本人の限界を越えないようにするため、日頃の生活の中で疲れや不調をよくとらえながら、セルフ・コントロールの工夫をしていく必要があります。うまくセルフ・コントロールをすることができるようになっていけば、再発に早期に気づいたり、再発を未然に予防したりすることが可能となっていきます。

 (中    康)

新型コロナウィルス(2019-nCoV)の流行に際しての、子どもたちへの心理的援助

WHOの提言を翻訳したものです(原著:Helping children cope with stress during the 2019-nCoV outbreak

子どもは、ストレスに対して、例えば依存的になる、不安になる、ひきこもる、怒りっぽくなる、あるいは動揺する、おもらしをする等、様々な方法で反応します。

お子さんの反応に対して、子どもの支えになるようなやり方で対応しましょう。

子どもは、困難な時期には、大人の愛情や関心を必要とします。子どもに、ゆったりできる時間を確保し、十分な思いやりを示しましょう。

子どもの話をよく聴くことを忘れないようにします。優しい言葉がけをし、安心させてあげましょう。

もし可能であれば、子どもが遊んだりリラックスしたりできるような機会を作りましょう。

可能な限り、親や家族が子どもと近い距離を保つようにし、子どもと親や養育者を分離することは避けましょう。もし分離が避けがたい場合(例えば、入院)、定期的な接触をするようにして(例えば、電話で)、安心させてあげましょう。

可能な限り、普段どおりの日課やスケジュールを守るようにしましょう。一方、新しい環境においては、新しい日課やスケジュールを作りましょう。その中には、学校に行くことや勉強すること、安全に遊んだりリラックスしたりすることを含みます。

子どもに対して、今何が起きているかについての事実を伝えましょう。何が起きていて、病気にかかってしまう危険を減らすためにどのようにしたらよいかについて、わかりやすい情報を提供しましょう。子どもの年齢に応じて、わかりやすい言葉で伝えていく必要があります。

それには、どのようなことが起きうるかについて、安心できる形で情報を提供することも含まれます。具体的には、家族の誰かや子ども自身の具合が悪くなるかも知れないこと、そのような場合にはしばらくの間病院に行かないといけないかも知れないこと、医師が具合を良くしてくれること等です。

(翻訳: 中 康)

関連: 新型コロナ流行に際してのストレスへの対処(WHO提言)

新型コロナウィルス(2019-nCoV)の流行に際してのストレスへの対処

WHOの提言を翻訳したものです(原著:Coping with stress during the 2019-nCoV outbreak

危機的な状況の時に、悲しくなる、ストレスを感じる、混乱する、恐怖を感じる、あるいは怒りを感じる等はごく普通の反応です。

信頼している人と話すことは、あなたの助けになります。友人や家族に連絡をとりましょう。

もし自宅に留まらざるを得なくなった場合には、健康的な生活の仕方を維持しましょう。

具体的には、適切な食事をとる、睡眠をとる、運動する、そして愛する家族とやりとりをする、他の親族や友人とメールや電話で連絡をとる等です。

あなたの気持ちの動揺に対処する方法として、タバコ、アルコール、薬物等は避けましょう。

もし打ちのめされたような気分にとらわれてしまう場合には、医療保健従事者やカウンセラーと話しましょう。もし必要なら、身体的・精神的な健康に関する援助を得るため、どこに行きどのようにすればよいか、計画を立てましょう。

事実を確認しましょう。あなたが、自分にふりかかる危険を正確に判断し、合理的な予防措置を講じることができるようになる助けになるような情報を集めましょう。世界保健機構(WHO)、国、地方自治体のウェブサイトなど、あなたが信頼できる情報源を見つけましょう。

あなたが不安になると感じるような報道を、あなたやあなたの家族が見たり聞いたりする時間を減らすことによって、心配や気持ちの動揺を抑えましょう。

過去にあった困難な状況に対処する際に、あなたの助けとなったような方法を活用しましょう。今回の流行に際して、あなたが、自分の感情の揺れ動きに対処するために、そのような方法を活用しましょう。

(翻訳: 中 康)

関連: 子どもたちへの心理的援助(WHO提言)

うつ病で療養をする際の工夫

 (うつ病の治療の基本については、別コラム「うつ病・うつ状態からの回復」をご参照ください。)

うつ病の療養で何を目指すか

  うつ病で療養をする際に、どのような状態になれば回復なのか、どのような状態になれば仕事に復帰しても大丈夫なのか、迷うことが少なからずあるように思います。

  うつ病の療養の基本は、まずは普通の生活が送れる位に症状が回復することです。うつ病の症状がいろいろ残っている状態で、時期尚早な無理な復職をしようとすると、短時間でうつ病が再燃してしまう危険が高まるため、注意が必要です。

  その際に、よく議論になるのは、治療開始前よりある程度よくなったからよしとするか、自分のベストの状態までよくしていくかですが、考え方としてはなるべく自分のベストの状態に回復するようにした方がよいでしょう。自然回復をゆっくり待つというよりは、薬物療法の力で、あるいは生活の仕方を工夫することによって、よりよい状態にもっていくことが必要です。

疲労が蓄積しないようセルフ・コントロールが必要

  回復期には、自分の中に疲労が蓄積していかないようにセルフ・コントロールが必要になってきます。焦るあまり、無理なスケジュールを自分に課したり、あたかも体のトレーニングをするような厳しい計画を立てたりすることは禁物です。無理をし過ぎると、蓄積疲労が増大してしまい、うつ病からの回復にとってマイナスになってしまいます。

自分の気持ちを大切にする

  セルフ・コントロールをうまく行っていくためには、自分の正直な気持ちを大事にする必要があります。つまり、生活の中で何をやっても構わないのですが、自分がやりたくない・億劫だ・辛い・疲れる等と感じることは避けた方が賢明です。具合の悪い時期には、ごろごろして過ごす、だらだらと過ごす形でも、それが休養につながるので構わないわけです。回復期には、どの程度仕事や家事や身の回りのことを行うのがよいかを、自分で判断していくことが必要になります。例えば、家族や親しい友人が、心配して外出や外食に誘ってくることはしばしば経験しますが、そのような誘いに無理に合わせるのではなく、億劫であれば、断るか先延ばしにした方がよいでしょう。また気分転換に旅行を計画する方もいますが、あまりにも状態が悪い時期は控えた方がよいですし、回復期にはいっても、頭で考えたよりも疲れやすいことが多いため、旅行などは慎重に考えた方がよいかも知れません。もし旅行に行く場合には、予定にゆとりをもち、ハードに動き回る日程は避け、調子が悪ければ、予定を変更して宿泊先でゆっくり過ごしたりできるような計画がよいように思います。

家族に理解してもらう

  回復期には、家族に自分の状態や、何ができて何ができないか等について理解してもらい、うまく回復していけるように協力してもらう必要があります。回復のめざし方について家族と考えが一致しない場合には、主治医の診察に家族にも同行してもらい一緒に対応策を考えるのもよい方法だろうと考えます。また家族関係がストレスになっている場合には、それをどのように軽減していくかも、大事な相談事項になるでしょう。

一人でできるリハビリテーション

  症状がかなり回復してきたら、仕事を休んでいる場合は、復職のために、リハビリテーション的な計画を主治医と相談しながら立てて、「一人リハビリ」をする選択肢もあります。具体的には、自宅から、例えば図書館のようなところに出かけて、午前中数時間、読書や仕事に関係する情報収集などをして過ごして帰って来る。次の段階では、昼食を外で済ませ、午後図書館で一仕事してから帰って来る。午後を、例えばジムや水泳に行くとか散歩に行くとかでも構いません。体を動かすと、復帰に向けての体力もつきますし、気分もすっきりするので、悪くない選択と考えます。

復職のためのリワーク・プログラム

  長い期間仕事を休んでいるような場合には、リワーク・プログラムを活用する選択肢もあります。これは、週に何日か通って復職のための準備練習を集団で行うもので、医療機関、障碍者職業センターなどで実施しています。但し、短期間の休職の場合には、リワーク・プログラムのようなものを利用せずに、復職できることが多いように思います。

産業医との相談

  また復職に際しては、職場の産業医の面談が組み込まれていることもあります。そのような場合には、主治医の診察とは別に、産業医と相談しながら職場復帰を進めていくことになります。

  以上のように、うつ病の療養のしかたには、うつ病の程度によって様々な工夫や方法があります。主治医と十分に相談しながら、ご自分にあった療養方法をみつけていけるとよいと考えます。

(中    康)

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診療時間

時間
9:30〜12:30 - ◯◎ ◯◎ - -
13:30〜18:30 -
◯◎ ◯◎
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◯心療内科・精神科
◎心理テスト
★神経内科(15:00~18:30) 

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