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うつのつらい時期をやり過ごす工夫

うつ病初期の症状が強くつらい時期

 うつ病は、何らかのストレスや疲労が蓄積して、自力では回復しにくい慢性疲労状態に陥ったことを意味します。睡眠導入剤や抗不安薬 (いわゆる安定剤) は即効性があります。しかし、気分の落ち込み・やる気がでない・起きて動くことが大変・考えがまとまらない等のうつ症状を改善する抗うつ薬が効果を発揮するまでは、概ね2週間程度かかります。

 具合が悪くつらいのに、良くなる見通しがはっきりしない、良くなっているとあまり感じられない、そして頭の中は悲観的な考えが駆け巡りやすいような、不安になりやすい時期です。

まだ抗うつ薬があまり効かない時期の工夫

  具合が悪い時は、無理をせずに休む、手を抜く、人に任せる等の対応をするのがよいでしょう。横になって休んでいたり、ごろごろ・だらだらしていたり、寝たり起きたりの生活をしたりしていて構いません。このような時に無理をして動こうとすると、蓄積疲労がさらに積み増しになり、状態がさらに悪化することもあります。うつ症状が回復してくれば、自然と動けることが増える段階がいずれやってきます。そのためにも、通院や服薬は中断せずに継続する必要があります。

  周りからどう思われているか、周りに迷惑をかけているのではないか、また元気な自分を取り戻すことができるのだろうか等、不安や悲観的な考えが湧きやすい時期ですが、まずは御自分の心身の休養が第一です。

 そのような時に覚えておいてよいことの一つは、うつ病の場合、早朝から午前にかけてが最も調子が悪い時間帯だということです。早朝に目が醒めてしまう、目は覚めるがなかなか床から出られない、起床直後の気分がひどく落ち込んで辛い等の状態になるのですが、それはうつ病の症状のサイクルなので、病状が悪くなってしまった訳ではありません。

このような時期には、家事や外出など、何かする時は午後の後半や夕方からにした方が、動きやすいかも知れません。

 しかしうつ病は、症状が良くなる時期がいずれやってきます。苦しい状態がずっと続くのではなく、出口は必ずやってきます。いずれ回復することを信じ、回復を待つ必要があります。とはいえ、不安に思ったことは主治医に相談し、不安を解消していきましょう。

 うつ症状があるため、考えが悲観的になってしまうことがよくありますが、それは自分の本心とは異なります。そのため、大事な決めごと(仕事のこと、生活面のこと)は、元気になるまで棚上げにすることが賢明です。

薬が少し効いてきた時期の工夫

 薬が効いて症状が徐々に改善するようになります。そうなってくると、段々良くなっていく実感が持てるようになり、そのうち良くなるだろうというイメージを持ちやすくなり、希望が見えやすくなります。

 しかしとても疲れやすく、頭で考えたようには動けないことが少なくありません。頭では動けると思っていても、自分では十分意識していないが、とても疲れ切った自分の一部が水面下に隠れているのです。

 このような時期に、今日は調子がいいと思って頑張って外出したり家事をしたりするなど、これまでなかったような行動をとると、後から疲れがどっと出ることがあります。当日の夕方から夜に動けなくなったり、翌日寝込んで動けなくなったりすることが、しばしば起きます。このような調子のアップダウンを繰り返すジェットコースター状態が、とてもよくみられますが、疲れて動けないのは無理に動いた疲れに対する一時的な反応なので、病状そのものが本格的に悪化したわけではありません。調子が良くても、動く時間や仕事量を少し減らすと、後からの疲れや伸びて動けない程度がましになります。

要は、疲れ切っている自分の心身の声を聞く必要があるわけです。焦って無理して動こうとしないことが大切です。

 この時期には、遠慮せずに、家族に援助を頼み、家事等はしばらくの間は肩代わりしてもらうのが良いでしょう。また家族や知人がよかれと思って、外食や外出、旅行などの提案をすることがとてもよくみられます。しかし、本人にとっては過大な負担となってしまうことが、少なくありません。何か提案を受けても、自分の気がのらない場合は、周囲に合わせて無理をして動くのではなく、断ってゆっくり過ごした方が、回復にはよいといえます。

 ここで必要なことは、自分が今できることの限界を越えないよう、上手にセルフ・コントロールをしていくことです。それができるようになると、回復した後で、うつ病の再発予防にそのまま生かすことができます。

どこまで回復することをめざすか

 うつ病は、少し良くなればよいのではなく、一番元気だった自分を取り戻していくのが治療の目標にするのが良いでしょう。少し良くなったからといって、焦って何かに取り組むと、うつ症状が悪化する危険か高くなります。そのため、まずは普通に元気な生活ができるよう、もともとの自分の調子を取り戻していくことが必要です。そのような回復の道筋について主治医とよく相談しながら、御自分のセルフ・コントロール力を増していけるよう工夫をしていきましょう。

 (中    康)