家族がうつ病にかかった時の理解と対応
調子の悪さを感じとる
うつ状態にある時は、表情が暗く沈んだ感じになり、表情の変化も少なくなります。夜眠れなくなったり、食欲がなくなって食事量が減ったりします。悪い方向の考えばかりが浮かびやすくなるため、話も悲観的になります。動きが少なくなり何事も億劫そうに見えます。ずっと同じ姿勢を続けていたり、横になることが多くなったりしますし、特に午前中を中心に横になって過ごすことが増えます。外出が減り、仕事を休むようになったりし、それまで楽しんでいた趣味や異性にも関心を示さなくなることもしばしばみられます。以上のような症状が、特に早朝から午前にかけて強まりますが、軽症の場合には夕方から夜にかけては結構元気になることがよくあります。しかしより重い症状になると、1日横になって過ごすようになることもあります。
本人の訴えは、額面通り受け止めてよい
うつ状態にある場合、中等度の症状であれば家族が見てわかることが結構ありますが、軽症のうつ状態の場合は、周りからは症状をはっきりとはとらえにくいことがあります。一見した状態よりも、本人はもっと苦しんでいることが少なくありません。そのようなわけですので、本人の訴えは額面通り受け止めた方がよいでしょう。例えば、はた目には普通に睡眠をとっているように見えても、眠りが浅く夜中に目が醒めたりして苦しい体験をしていることは少なくないのです。また、意欲が出ない、何事もするのが億劫だ等といった症状は、表面からはなかなか見えづらい症状と言えます。
とても疲れやすいことを理解する
不調の時期には、話したり人と会ったりすることさえ億劫になっていることが少なくありません。家族と話すのさえ億劫になります。そのような時は、長話をするのではなく、短い声がけを適度にした方が、本人に不要な負担をかけず、安心感につながります。
仕事や家事の負担を軽くする
十分な休養をとることが蓄積疲労から抜け出していく必要があります。そのために、仕事や家事等の負担を軽減する必要があります。普段本人がとっている役割を、誰かが肩代わりしてあげた方がよいでしょう。過大な期待を抱いて、本人を過度に励ましたり無理に頑張らせようとすると、うつ症状が悪化します。
薬物療法の必要性を理解する
うつ病は、蓄積疲労がとても強くなった状態で、そこから抜け出ていくためには、単なる休養では不十分で、薬物療法の効果が大きいと言えます。主治医とよく相談して、必要な薬を服用することが回復していく上で、非常に重要です。また抗うつ薬は効果発現に2週間程度かかるため、回復には時間がかかることも頭に入れておきましょう。
周りからせかすことは避け、本人ペースでゆっくり療養
本人のペースでゆっくりと回復していくのが一番よい回復のしかたです。家族のペースを押しつけてせかさない方が良い結果につながります。早く良く使用として本人を叱咤激励するようなことは禁物です。
出かけるかどうかは本人の意思を尊重する
本人の回復のために良かれと思って、周りから外出・外食・旅行などを勧めたくなることが多いようです。しこし本人が自宅にこもりがちな時期は、まだエネルギーの充電が十分ではないのです。抗うつ薬が効果を表し、うつ症状が改善してくると、自分から自然に動けるようになってきます。本人が外出等をしぶる場合は、周りから無理に勧めるのではなく、本人の意向を尊重する必要があります。無理に外出等をさせようとすると、その時は無理をすれば動けるかも知れませんが、うつ症状が悪化します。
復職は普通に生活が送れるようになってからがよい
仕事を休んでいる場合は、復職を急がせない。焦った復職は、再発の危険が高くなってしまうからです。十分に調子を回復し、元通りに生活が送れるようになってから、復職を考えるのがよいと言えます。復職に際しては、ストレスが本人の限界を越えないよう注意や工夫をしながら、長く働き続けることを目指していくのが最もよいやり方です。
良くなってからも再発予防が大事に
うつ病から回復した後も、うつ病の再発に注意をしていく必要があります。そのためには、仕事や生活で降りかかるストレスが本人の限界を越えないようにするため、日頃の生活の中で疲れや不調をよくとらえながら、セルフ・コントロールの工夫をしていく必要があります。うまくセルフ・コントロールをすることができるようになっていけば、再発に早期に気づいたり、再発を未然に予防したりすることが可能となっていきます。
(中 康)