思春期にはいった子どもへの対応の難しさ
思春期の子どもの対応の困難さ
思春期にはいった子どもは、親からみると対応に苦慮することが少なくありません。
第二次性徴 (男子の場合は精通、女子の場合は初潮) が始まる頃から、親離れが進んでいきます。これまでとは違って親に話をしなくなる、返事もせずに黙り込む、以前のように親の言うことをきかずに反発する、親に対して不満を言うようになる等も起きてきます。また、自室にこもることが増え、親の目からは子どもに何が起きているのかが見えづらくなってきます。さらに、親に対して「うるさい」「うざい」等と反発するなど親子間の感情的なもめごとも増してきますし、場合によっては暴言・暴力に至ることもあります。一方、そのように激しい反応でなくても、返事をしない・黙っているが言うことをきかない等、静かな反発をする子もいます。
態度や行動で表現してくるための対応の難しさ
特に思春期の前半(中学生位)は、心の中で何が起きているのかを言葉で表現することをせず、態度や行動の形で親にあたってくるため、親御さんからみると意味がわかりにくい状態になります。
そのようにして親とは距離をおく一方で、同年代の仲間との交流が増え、例えば大人が容認しづらいようなサブカルチャー(ファッション、髪型、押しのアイドル、ゲーム等)にはまったり、友人のところではこうなんだからと友人のことを例にあげつつ親に反発したりしてくることも少なくありません。
親を嫌っているのではなく、親離れが進みつつあるあかし
そのような子どもの態度や言動をみると、親御さんとしては、子どもに嫌われてしまったのか、憎まれているのかと悩むことも少なくないことでしょう。
しかしこれらのことは、子どもが親を嫌うというよりは、心理的な親離れがどんどん進んでくるための現象なのです。親子であっても、親とは違った気持ちや考えをもつようになります。子どもは、いつまでも親の言うことだけを聞くいい子であったら、自分の頭で考え自分の足で歩いていく自立した大人にはなることができません。将来の希望も親の期待とは違った道を進もうとすることも少なくないため、親子の考え方の衝突が起きやすくなります。
思春期は心理的な親離れの時期
子どもは第二次性徴の発現に続いて、男の子も女の子も大人の体に変化することでの期待や戸惑いを覚えます。そしてその時期に、心理的親離れがどんどん進んできます。親子であっても性にまつわる話はしづらく、同性の同年代の友人とのやりとりや相談がとても大事なものになってきます。同性の友人との間で、性に関することをやりとりしたり、異性に関する興味を分かち合ったりすることを通して、男の子として・女の子としての気持ちがはぐくまれていきます。またこの時期には、羅針盤としての親に頼る度合いは半減し、同年代の同性の仲間集団との交流が増し、親とのやりとりよりも友人とのやりとりが楽しく優先度の高いものとなっていきます。そして家族外の様々な人 (学校の教師、塾の教師、習い事の先生、友人、憧れの芸能人やスポーツ選手、ネットの中でのヒーロー等) の良いと思うところを取り入れていきます。そしてそれを通して、将来の夢や理想の自分について、親から受け継いだものから作った幼少期の夢や理想に改訂を加えて、自分なりの夢や理想を作りあげていく時期です。
それまでは何でも親の言うこと聞いてきた子どもが、親とは違った考え方や気持ちを抱くようになり、親から独立した一人の人間として親に対しても意見を言ってくるようになるわけです。そのため、必然的に親子の葛藤や対立が起きるようになります。そのような状況は、思春期の子をもつ親としては、なかなか対応の難しい状況になってきます。
自己主張も反発も、しっかりした大人になっていく一段階
以上のように親子の考えが食い違うといとう困難な状況を通過しないと、子どもはしっかりとした大人にはなれません。そのような思春期の親子関係を心の発達の視点から見ますと、思春期の心理的な親離れは順調に進んでいるということになります。親に対する自己主張や反発は、思春期を越えて人の人として生きていく力を含んでいるので、見込みのあること、対応は困難であっても前向きな現象ということになります。
思春期の反発は抑えつけるのではなく、子どもの気持ちを考えて大目にみる
そのため、理解や対応に苦慮するようになっても、親の思い通りに動かしたりコントロールしようとしたりすることは諦める方がよいように思われます。うちの子も思春期にはいったのだなと考えて、子どもの気持ちや考えを一人の人として尊重しながらやりとりするようにしていくのが賢明な方法ということになるでしょう。
反対にそのような親離れや反発のサインがあまりみられない良い子の方が、思春期を通過していく上では心配になるところがあります。
親離れをして同性の仲間集団にはいれるように
親離れが進みつつある段階においては、濃厚な親子関係が良いとは言えません。子どもが自分のことは自分でやるようになることが、とても重要となります。具体的には、子ども部屋の中の片付けや掃除は自分でするようにしていく、子ども部屋に必要以上に立ち入らない、子どもの日記やスマホは見ない、月ぎめの小遣いの額を決めて使い方は子どもの自由に任せる等が、子どもの心理的な発達を促進することにつながります。
またこの時期に、親との関係が密接過ぎると、同性の友人関係にはいっていくことが難しくなってしまいます。親から心理的に離れて、同性・同年代の仲間集団にはいっていけることが大事なことになります。子どもが自由に友人と関わったり、自由に外出したりすることについて、心配のあまり制限しようとしたり頻回に連絡をとったりするのではてなく、子どもを信じて、子どもの自由裁量に任せる部分を大きくしていくことが、思春期の時期の対応のコツと言えるでしょう。
本人も意識しきれていない悩みを抱えていることも
思春期に子どもが抱く悩みの一部は、本人も気づくことのできない無意識の葛藤を含んでいます。そのため、子ども自身にも理由がよくわからなかったり、前向きにやっていこうと頭では考えても無意識のブレーキがかかってうまくいかなかったりすることもでてきます。親御さんが子どもの真意を問いただそうとしても、子ども自身、自分でも気づいていない無意識の悩みの部分があるため、答えられないということも起きてきます。
核家族ならではの親の対応の負担の大きさ
現代は核家族化が進行し、昔であればいた近所の大人や親戚の存在は希薄になってきています。今議論しているような思春期をめぐる葛藤は、親子だけの間で展開するため、親子双方にとってきついものになりやすいと言えるでしょう。言葉を変えると、親の対応に大きな負担がかかってくることになります。
両親のみの相談も可能
初台クリニックでは、思春期の子ども自身の相談に加えて、親御さんとして思春期の子どもにどう対応したらよいかの相談 (親ガイダンス) も行っています。仮に子どもが受診したがらない場合でも、親御さんのみのご相談も可能です。
子どもの思春期にまつわることで親御さんとしてお困りのことがあれば、初台クリニックにご相談下さい。